2016-08-15

こんぴら製麺事件

事件番号: 平成26年(行ケ)第10266号 「こんぴら製麺事件」商標登録取消審決取消請求事件(平成27年6月18日)

事件概要                                 出願人(原告) は、本願商標(「下掲参照」)について、指定商品及び指定役務を、29類「カレーうどんのもと、油揚げ、魚工藤先生_こんぴら製麺介類の天ぷら、かつお節、干しえび、焼きのり」、30類「うどんのめん、その他穀物の加工品、めんつゆその他の調味料、香辛料」及び43類「飲食物の提供」として登録出願をした処、拒絶査定を受けてその不服審判請求をした(不服2013-18639号)が不成立審決を受けたため、知財高裁に対し、その取消しを求めた事案である。

争 点                                  本願商標中の「こんぴら」が「宗教法人金刀比羅宮」の略称で商標法4条1項8号の著名な略称に当たるか否か。

結 論                                  「こんぴら」が「宗教法人金刀比羅宮」の「著名な略称」に当たるか否かについて見るに、「こんぴら【金毘羅、金比羅】」の見出しの下に、広辞苑第6版には、「香川県の金刀比羅宮ことひらぐうのこと。」(乙2)・・・との記載がある。以上の事実に加え、敬意や親愛の気持ちを示すために、名称や略称等に「さん」、「様(さま)」などの接尾語を付する場合があり、接尾語「さん」を付した「こんぴらさん」とともに、「こんぴら」の語は、「金比羅宮」、「金刀比羅宮」を意味すると認められ、これを法人格の主体として称するときには、「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして、一般に受け入れられている。そうすると、「こんぴら」を「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」と認め、本願商標が、「他人の名称」の「著名な略称」を含むと判断した審決に誤りはない。

コメント                                  本願商標中の「こんぴら」について、「宗教法人金刀比羅宮」の略称で4条1項8号の著名な略称に当たるか否かが争われ、これが肯定されたものである。原告が略称と主張した「こんぴらさん」、「こんぴら様」とともに、辞書等の掲載事実から、略称の一つと認定されたものである。また、略称の著名性については、『「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして、一般に受け入れられている。』として、最高裁判例(最高裁平成16年(行ヒ)第343号 同17年7月22日・集民217号595頁)に倣っているが、「一般に受け入れられている」とは、一般人の間で通じているという意味なのだろう。

工藤 莞司