2016-12-22

フランク三浦事件

事件番号:知財高裁 平成27年(行ケ)第10219号 「フランク三浦事件」審決取消請求事件(平成28年4月12日)

事件概要 
原告(被請求人・商標権者)の有する指定商品「時計、宝玉及びその原石」等とする本件商標(「フランク三浦」(「浦」の右上の「、」はない)登録第5517482号)の登録について、被告(請求人)は、商標「フランク ミゥラー」外を引用して商標法4条1項11号、15号等違反を理由として無効審判(2015-890035)を請求した処、特許庁は、無効成立の審決をしたため、被請求人が知財高裁に対しその取消しを求めた事案である。

争 点 
商標法4条1項11号に係る商標の類否、15号に係る出所の混同の虞

結 論 
本件商標と引用商標は、称呼においては類似するものの、外観において明確に区別し得るものであり、観念においても大きく異なるものである上に、本件商標及び引用商標の指定商品において、商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るともいえないから、・・・本件商標は引用商標に類似するものということはできない。
本件商標と被告使用商標とは、称呼は類似するものの、外観及び観念が相違し、かつ、本件商標の指定商品において、称呼のみによって商標を識別し、商品の出所を判別するものとはいえない。加えて、被告がその業務において日本人の姓又は日本の地名を用いた商標を使用している事実はないことに照らすと、本件商標を指定商品に使用したときに、当該商品が被告又は被告と一定の緊密な営業上の関係等にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとはいえない。

コメント
 本件は、11号、15号等に係る無効審決の取消事案で、判断時は出願時及び登録査定時である(この点当事者の主張等、審決も曖昧)。一部報道は誤解したが、登録後の原告のパロディ的使用は判断の対象でもなく、直接的には考慮外である。本件判決は、両商標は非類似と、また混同の虞もないと審決とは逆の判断をし、審決を取り消した。しかし、15号の判断基準の「商標の類似性」は11号の類似とは別の筈で、15号はそもそも商標類似を要件としていない。また、本件商標は、引用商標とは称呼上類似すると、そして引用商標の連想を認めている。加えて、ただ乗り即15号該当ではないとしたが、保護の対象は業務上の信用で、混同の虞の防止は既に化体した信用の保護のためである。これらからすれば、本件判決は消極的に過ぎたと思われる。(工藤莞司)