2016-12-17

不使用取消審判に係る使用 =商標的使用の要否と最新裁判例=- by 工藤莞司 弁理士

商標の使用については、侵害や不使用取消審判等で問題となり、このため商標法は2条3項に使用に関する定義を規定している。しかし、定義規定にはない出所表示機能を果たす態様での使用、商標的使用については、侵害に係る使用では要することで異論はないが、取消審判では説が分かれている。

最新裁判例 最近、知財高裁は、『商標法50条の主な趣旨は,登録された商標には,その使用の有無にかかわらず,排他独占的な権利が発生することから,長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め,国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので,一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。上記趣旨に鑑みれば,商標法50条所定の「使用」は,当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用(商標法2条3項各号)されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである。』(「LE MANS不使用取消事件」平成28年9月14日 平成28年(行ケ)第10086号)と不要とした。

反対説 これに対して、取消審判でも商標的使用を求める説では、使用は業務上の信用に係るべきもので、2条1項の商標の定義規定にはないが、商標の定義規定にはその本質的機能たる出所表示機能の具備は当然の前提として含まれるとする。学者中心の説(前提論・建前論)である。

しかし、現行法制定当初は、反対に出所表示機能の存在を前提としないため、商標は広い概念となり、侵害の認定が容易になる旨解説されている(「新工業所有権法逐条解説」昭和40年改訂版576頁)。前提論はその後の改説である。

私見 商標的使用は、登録商標に係る信用を害する虞の有無がポイントとなる侵害訴訟において問われるもので、この点、平成26年改正において、侵害に対する抗弁事由に商標的使用が追加されて(26条1項6号)、明らかである。私は、以前から不要説を採っている(拙著「商標法の解説と裁判例」改訂版352頁)。法全体の仕組み・構成から導かれる解釈として、である(「POS事件」東京地裁昭和62年(ワ)第9572号 無体裁集20巻3号444頁)。

因みに、同じ使用でも、侵害事件ではその成否に係り侵害者側のイ号標章、取消審判では不使用の制裁としての登録取消しに係る商標権者側の登録商標の問題であり、同列には扱えないし、扱うべきではないと思う。現在では、国内通過の輸出も使用とされている(2条3項2号)。