2017-03-22

豪州:「SAKE」商標に見る記述的商標の危険性 - DibbsBarker

ブランド・オーナーは、「記述的要素」を含むブランド名の商標を登録したいとの誘惑に駆られることがあると思うが、オーストラリア商標局の最近の決定は、記述的な商標による第三者への権利行使の困難さを示し、記述的商標の危険性を示唆するものとなった。ブランド・オーナーは、記述的要素を組み込んだ商標を登録するときは注意を払う必要があり、商品・役務を第三者のものと区別する商標出願により重点を置くべきであろう。

オーストラリア商標局の最近の決定は、保護しようとしている商品・役務を普通に用いられる方法で表すブランド名を選択することの危険性について注意喚起している。記述的な商標の登録は、第三者が類似する商品・役務に使われるブランド名に含まれる記述的な要素を使用制限することを究極的に困難にしてしまうことがある。

バックグラウンド

英国に本社を置くSake No Hana Limited(出願人)は、「SAKE NO HANA」商標の国際登録で、食品、飲料、レストラン、宿泊施設の提供を含む43類の接客サービスを指定し権利範囲を広く求めた。商標局は通常の方法で出願人の商標を審査し、何事もなく保護付与が認容されたが、2014年9月に許可公告されたとき、それが別の第三者の目に留まった。

異議

Urban Purveyor Group Pty Ltd(異議申立人)は、2010年6月以来、レストランを指定する43類の商標3件を所有するオーストラリアの有名企業。

異議申立人は、オーストラリア商標法(1995年)の第 42 条(中傷的な商標又はその使用が法律に反する商標)の(b)、第44 条(同一等の商標)、および第 60 条(オーストラリアにおいて名声を得ている商標に類似する商標)を根拠に、出願人の「SAKE NO HANA」の登録に異議を申立てた。異議申立人の主張は、「SAKE NO HANA」は、「SAKE」という要素を含み、異議申立人の「SAKE」商標と類似するため、オーストラリアの消費者は、1.それぞれの商標の下で提供されるサービスが同じ業者の提供するサービスと見なす、2.出願人の商標を短縮して「SAKE」と考える、3.出願人商標「SAKE NO HANA」が、異議申立人の「SAKE」ブランドの一種であると誤って見なしてしまう、というものであった。

異議申立人は、Sakéレストランに関する記事や年間収入とマーケティング費用、数々の業界賞、2012年にテレビ番組「マスターシェフ ~天才料理人バトル!(Masterchef)」への幹部シェフの出演など、さまざまな証拠を提出し、その著名性を証明しようとした。その著名性の結果として、出願人の「SAKE NO HANA」商標の使用および登録は、消費者に誤解を与え、混同を招く虞があり、オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)第18条違反するとした。

商標局の決定

商標局は異議申立人の異議を棄却した。その理由として、「SAKE」はオーストラリアで一般的に理解されている言葉であり、33類のライス・ワインのような商品を直接的に説明するものである。レストランや類似する役務に関連して商標が使用された場合でも記述的妥当性を持つことから、異議申立人の主張は両商標間の混同によってもたらされる現実的かつ具体的な危険性を証明することができなかった。オーストラリアの消費者は、必ずしも「SAKE」という言葉を含む商標が同じ出所を示すものとは想定しない。全体的には両商標間の称呼的且つ外観的に顕著な相違があり、商標の印象につながる最初の単語「SAKE」の存在を減少させている。オーストラリアの消費者が「SAKE NO HANA」商標を短縮する場合、「SAKE」の記述的な性質を考慮すると、「NO HANA」が最も記憶に残る要素として短縮される。異議申立人は、提出した様々な証拠に依拠して「SAKE」商標の著名性を証明することができたが、上記の理由で混同の虞はないとされた。

教訓

オーストラリアのブランド・オーナーは、自己の商品や役務と関係する、または直接的に記述する商標を出願するより、第三者の商品・役務と区別するための商標を出願することの方が賢明である。直接的な記述要素を含む商標や指定商品・役務に関する説明的な意味を有する商標を使用する場合、識別力を有する追加の要素を組み込むことによって登録を確実にできる。ただし、商標登録はできても、その登録を根拠にした第三者に対する積極的かつ効果的な権利行使は困難かもしれない。

本文は こちら (The dangers of descriptive trade marks)