2017-05-29

タイと米国:商標の異議申立手続の違い - Tilleke & Gibbins

商標の異議申立手続は、一方の当事者が別の当事者の出願商標に対する法的手続きで、自己の商標権を保護するための有効なツールとなり得るものであり、第三者によって出願された商標が自己の商標と混同しやすく、消費者に混乱を引き起こすと判断した場合に利用することができる。ここでは、タイと米国で異なる商標異議申立手続に関して、それぞれの利点と欠点について検討する。

タイでは、タイ知的財産局(DIP)に商標が出願された後、商標登録官による審査が行われる。商標登録官が商標の登録を承認した場合、出願商標は公報に掲載されたのち60日の間、承認された商標登録に異議を申立てることができる。タイの異議申立手続は商標登録官により開始される。異議申立人は、商標が登録されるべきではない理由を異議申立書で提出する。出願人はこれを受領した日から60日以内に答弁書を提出する。担当登録官は両当事者の提出を検討し、12-18ヶ月以内に決定を下す。

米国では、米国特許商標庁(USPTO)に商標が出願​​された後、審査官によって審査される。出願商標が承認され、その他の要件がすべて満たされている場合、商標出願は公報に掲載される。出願商標の登録に反対する第三者は、商標審判部(Trademark Trial and Appeal Board:TTAB)と呼ばれるUSPTOの行政審判所に異議を申立てることができる。異議申立書が受理されると、TTABは手続について通知を発する。出願人は異議申立に対する答弁書を提出しなければならない。その後両当事者は「ディスカバリー(証拠開示手続)」という証拠収集プロセスで、両当事者の主張立証に必要な証拠をできるだけTTABに提出して公平な判断を行おうとするものだ。
TTABが裁定を下す準​​備を整える頃までには、TTABは異議申立人が提出した異議申立書や商標出願人の答弁、審理をサポートするために両当事者が提出したすべての文書、情報、証言など、考慮すべき広範な法的記録を有することになり、当事者の請求があれば口頭審理も行うこともある。米国における商標権の異議に関する結審は、裁定の準備ができた日から10〜20週以内に行われる。TTABの裁定は、連邦巡回区控訴裁判所に上訴し、又は民事訴訟を提起することができる。

比較:タイにおける異議申立手続は単純で、異議申立てや異議に対する答弁のプロセスは分かりやすい。両当事者ができることは限られており、費用を比較的低く保つのに役立っている。また手続き上、両当事者が和解交渉を試みる機会を提供していない。一方、米国の手続は複雑でややこしい。両当事者は情報と文章を交換しなければならず、それぞれの主張についての認否、抗弁、反訴を裏付ける証拠を収集する機会が与えられる。このプロセスによりTTABが裁定を下す際に信頼できる堅牢な法的記録となる。しかしながら、このプロセスは費用が高くなる要因でもある。

米国とタイにおける手続上の主な違いは、米国では特定の状況で手続きを中断したり、期限を延長したりすることができるが、これはタイにはない制度である。米国では、公告日から異議申立提出期限までの間に、潜在的異議申立人は申立期限の延長を請求できる。潜在的異議申立人は、異議の手続き前に商標出願人との間で紛争を解決するために、延長を請求することはよくあることで、当事者が積極的に和解議論に入っている場合、進行中の手続を中断することもしばしば起こる。

本文は こちら (Trademark Opposition Proceedings: Comparing Thailand and the United States)