2017-07-20

EU:保護対象とならなかったピレリ・タイヤの位置商標 - Novagraaf

2017年7月、欧州連合(EU)一般裁判所(General Court)は、ピレリ(イタリア、ミラノに本社を置くタイヤ、フィルターなどを製造する企業)が商標として出願したタイヤ側面の湾曲した縞模様が、「位置商標」として使用による識別力を獲得したという主張を退け、欧州連合商標(EUTM)として拒絶されたのは正当であると判じた。

ブランド名やロゴマークを商標として登録するためには特定の基準を満たす必要がある。特に、他の事業の商品・サービスと、標章を付した商品・サービスの事業とを関連のある公衆が区別できるように、商標には「識別力」がなくてはならない。標章がこれらの要件を満たしていない場合、商標登録は拒絶されるか、商標権が付与されていても、潜在的に取り消される可能性がある。

獲得した識別力
もし標識が、識別力の欠如により商標として登録することが困難であろうと最初に判明した場合でも、後々使用によって識別力を獲得することにより、商標としての保護対象となる可能性は残されている。つまり、商標が長期間または集中的な使用で広く認識されていれば、「独占権を獲得する」ことができる。言い換えれば、識別標識として機能し、延いては商標として機能し始めた場合などだ。しかし、識別力を獲得したことを証明するのが難しい場合もある。例えば、ピレリの標章のように標章が非常に単純な場合だ。

ピレリの「位置商標」
最近、一般裁判所は、2014年10月にピレリによって出願された「位置商標(右下の画像)」について判決を下した。ピレリは商標区分第12類の商品、タイヤと車輪用リムおよび車輪カバーの保護を求めて商標出願した。ピレリは商標について「タイヤの側面でその外周に沿って等しく曲がったペアの縞模様で、位置商標である」と説明した。

EUIPO(欧州連合知的財産庁)の審査官は、識別力がないことを理由に該商標の登録を拒絶したため、ピレリは拒絶査定を不服として審判請求し、そしてEU一般裁判所に控訴した。一般裁判所は、出願された商標は非常に単純でありふれた幾何学形態であると判じ、「長方形の細長い形状でタイヤの側壁に貼り付けられているため湾曲しているように見える」という審判部の判断を支持した。

通常の消費者に加えて、ピレリの自動車タイヤに関連する公衆には、注意力の高い専門家が多いという申立てからは、出願された標章の識別力についての判断ができないが、公衆の注意力レベルに関わらず、ピレリのタイヤであると特定するには標識の識別力が不十分であり、また、ピレリは使用により識別力を獲得したことを証明していないと、一般裁判所は判じた。

「位置商標」の登録
位置商標を商標として登録したり権利行使したりすることは難しい課題である。近年の例では、リーバイス・ジーンズの赤いタブが数少ない登録例である。リーバイスのケースでは、商標は単純なものだが、使用によって必要な識別力を獲得したと、裁判所が認めたものだ。

本文は こちら (Stripes on Pirelli tyres not eligible for trademark protection)