2017-09-06

日本:注目裁判例、「ゲンコツメンチ」審決取消請求事件 - 工藤莞司弁理士

本件商標「ゲンコツメンチ」と引用商標「ゲンコツ」とは類似しないと判断した事例(知財高裁平成28年(行ケ)第10164号「ゲンコツメンチ事件」審決取消請求事件(平成29年1月24日)

事案の概要 原告(請求人)は、被告(被請求人)が有する指定商品30類「メンチカツを材料として用いたパン、メンチカツ入りのサンドイッチ」等に係る本件商標「ゲンコツメンチ」の登録が、原告所有の指定商品を30類とする登録商標「ゲンコツ」(引用商標)と類似し、商標法4条1項11号に違反したものとして、無効審判(無効2015-890083)を請求した(無効2015-890083)処、特許庁は不成立の審決をしたため、知財高裁に対し、その取消しを求めた事案である。

判 旨 認定取引の実情等からすると、メンチカツ同様に挽肉を使った料理である「ハンバーグ・ステーキ」(挽肉に刻んだ玉葱、パン粉、卵などを加え、平たい円形にまとめて焼いた料理。広辞苑第6版)が「ハンバーグ」と表現されているのに対し、「メンチ」の語は、挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げた料理である「メンチカツ」を表す名詞として、全国の取引者、需要者に、それほど普及しているとはいえない。以上によれば、本件商標において、「ゲンコツ」の文字部分だけが、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないし、「メンチ」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいえない。したがって、本件商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、引用商標と相違し、取引の実情を考慮しても、引用商標とは類似しておらず、商標法4条1項11号に該当する商標ではない。

解 説 結合商標である本件商標の分離観察の可否が争われて、否定されたものである。
 本件判決は、審決同様、本件商標中の「ゲンコツ」も、「メンチ」もいずれも識別力が弱く支配的印象を与える部分ではないと認定、判断したもので、その中で、「メンチ」が辞書への登載はあるが「メンチカツ」を意味する名詞としては普及していないとの認定である。
しかし、食品の形状表示としての「ゲンコツ」の登載はない一方で、「メンチ」はメンチカツの略称として広辞苑等に登載され、そして、本件商標の指定商品は、「メンチカツを材料として用いたパン、・・・メンチカツ入りの調理済み丼物」というのであるから、取引者・需要者が目の前の指定商品に使用された本件商標に接した場合、「メンチ」の部分は当該商品から「メンチカツを材料として用いたもの(品質)」を表すと理解することは少なくないと思われる。
 「メンチ」の普通名詞としての全国的普及を求めているが、広辞苑等への登載で足りる筈で、その評価、扱いが従来とは異なる。その前に、指定商品に本件商標が使用された場合の実際からの認定、判断が優先されるべきではなかろうか。すなわち、商標は、取引上の使用において機能するもので、商品に接する取引者・需要者の認識が前提のはずだが、出願書類上からのみ認定、判断のようで妥当な判断ではないと思う。(工藤莞司)