2018-07-11

ユーラシア(EAEU)商標 - GORODISSKY & PARTNERS

ユーラシア経済連合(EAEU)は、ユーラシア経済共同体を前身とする地域経済同盟で、2014年5月29日にユーラシア経済連合条約に基づき設立され、2015年1月1日に発足した。
EAEUの目的は、商品、サービス、資本、労働者の自由な移動を確保するとともに、経済における統一政策を実施することである。
現在のEAEU加盟国は、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシアで、すべてのEAEU加盟国は、パリ条約、標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定、商標法に関するシンガポール条約、標章の国際登録に関するマドリッド協定など、商標保護に関する主要な国際条約に参加している。さらに、ロシア、キルギス、アルメニア、カザフスタンは世界貿易機関(WTO)のメンバーであり、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(通称TRIPS協定)の義務を求められている。

EAEU域内では、商標の法的保護を得るためのさまざまな手続きが適用される。EAEU加盟国における商標に関する国内法により、絶対的及び相対的理由による審査を含む実体審査が行われている。また、EAEU加盟国において国内商標保護システムに幾つかの特色がみられる。ロシア、ベラルーシ、アルメニアでは、商標出願が公告された後、利害関係者であれば公告された商標の登録に異議を申立てることができる。
EAEU加盟国の国内法では、一定期間不使用商標の権利喪失を認めており、ベラルーシ(2010年1月25日以降に登録された商標について)、カザフスタン、キルギス、ロシアは、商標の登録日から3年間の不使用期間を定めている。
アルメニアの国内法での不使用期間は5年間だが、ユーラシア経済連合条約に従うためアルメニアの法律が改正される可能性がある。
商標に関するEAEU条約によって影響を受ける保護制度には、商標、サービスマーク、商品の原産地名称などがあるが、これらの合意案はユーラシア経済委員会(EEC)の下で起草されたものだ。
一般論として、合意案は加盟国の商標事務所(商標局)を統一しようとするものではなく、EAEU商標登録の出願が域内で同時に有効になり、各国特許商標庁(PTO)が保有するための国別に構成される地域商標の統一登録簿による保管を考慮して、各国の商標事務所の共同作業を規定している。
EAEU加盟国におけるEAEU商標の排他的権利侵害に関連する紛争は、国内法に従って処理される。そのため権利侵害に対する法的責任は国内で定められたものと同じになることだろう。

合意案では、EAEUを指定してEAEU商標として登録することができるが、視覚的に表現できるものでなければならない。
EAEU商標として保護を得るためには、EAEU加盟国の1つのPTOで出願をロシア語で提出する必要があり、国内を基礎とする出願の必要はない。これによりコストと時間の節約ができる。EAEU以外の国の出願人は、出願機関に登録されている商標弁理士を代理指名する必要がある。
審査は、出願機関によってのみ行われ、手数料は出願機関のある国の法律に基づいて課金される。審査結果が肯定的な場合は、ユーラシア経済委員会(EEC)のウェブサイトに公告される。公告日から3ヶ月以内に利害関係者は出願機関に商標の登録に対する異議を申立てることができる。申立て請求によって、出願機関を含む各国の商標事務所で絶対的及び相対的な拒絶理由がないか審査される。
類似審査は、国内、EAEU加盟国、国際登録出願、および統一登録機関において行われるが、出願手数料の支払日から6ヶ月以内に審査を完了しなければならない。
6ヶ月経過後、出願機関は国内官庁の意見に基づき、利害関係者の異議申立ておよび出願人の反論を基に、EAEU商標の登録を認めるか、拒絶理由通知を送付するかを決定する。EAEU商標の登録は、国内およびすべてのEAEU加盟国の了解を得たときのみ認められる。
EAEU加盟国のいずれかが登録を拒絶した時は、出願人は本国で適切な手続きを行うことで、査定不服を申し立てることができる。手続きが完了すると、国内管轄当局の決定が出願機関に送られ、査定不服に対する最終決定となる。
合意案では、EAEU商標の登録拒絶に関する最終決定の意思を出願機関が示した場合、その決定が下る前に、国内特許商標庁の「障害はない」という意見を受け、出願人はEAEU商標の出願を国内出願に変更することができる。

 EAEU商標が、合意案に示された絶対的条件の基準を満たしていない場合、他人の商号(trade name)やビジネス名(business name)と類似している場合、著作権、意匠権及び非財産的権利がEAEU商標の優先日前に権利が発生している場合、EAEU商標の登録および使用行為が権利の乱用や不正競争行為と認識される場合は、当該商標の有効性を争うことができる。また、EAEU商標が他人の商標、著名商標、商品の原産地表示を侵害するような登録の場合、EEC公式ウェブサイトの統一登録簿に関連情報が掲載された日から5年以内に、当該商標の有効性を争うことができる。また合意案は、EAEU商標の登録は当該国の法律で定められた手続に従って争うことができると規定している。管轄当局の決定により、EAEU商標が無効になった場合、出願人は、取り消された登録により設定された期間内に、取り消された商標の優先日で国内出願をする機会を有する。
EAEU商標の排他的権利は、出願日から10年間有効であり、10年ごとに更新することができ、更新費用はEAEU各国での更新費用と比較すると大幅に低くなることが示されている。
不使用により、EAEU商標が取消されることがあるが、EAEU加盟国の1か国でも使用していれば、不使用取消を免れることができる。合意案では、すべてのEAEU加盟国の国内手続に従って商標が登録されている場合、権利者の申立てにより、EAEU商標の登録に置き換えられ、登録証が権利者に発行されると規定されている。

 本文は こちら (A Eurasian trademark)