2018-07-20

韓国:過去5年間で約1万件の登録商標に取消審判請求 - Kim & Chang

最近、韓国のメディアに頻繁に登場するニュースが、登録商標の不使用取消に関する報道である。ある経済新聞は7月1日付で「昼寝中の商標権の紛争急増…喜ぶローファーム」というやや露骨な見出しで不使用取消審判の動向を紹介する記事を掲載し、これまで不使用取消審判にあまり関心がなかったローファームらの注目を集めた。今年6月にも、あるメディアで「昨年2,172件の登録商標が取消し…休眠商標への不使用取消審判請求が増加」と報道したことがある。

このように韓国で登録商標に対する取消審判請求が急増している理由は、2016年9月1日に施行された改正商標法で審判請求人の利害関係要件が削除されるなどして誰でも容易に不使用取消審判を請求できるようになったことが主な原因である。改正法施行前の2016年3月1日付経済新聞記事でも、「登録されているだけで使用していない商標、“誰でも”取消審判請求が可能に」という見出しで不使用取消の活用を積極的に紹介したところがある。

特許庁の資料によると、2017年の取消審判請求件数は2016年対比180%と急増した。最近5年間(2013年~2017年)の取消審判請求件数は合計で9,274件にのぼり、認容率も2017年には90%以上に高まっている。具体的な請求件数と認容率(括弧内)は、2013年1,043件(83.9%)、2014年970件(86.1%)、2015年1,124件(86.3%)、2016年1,207件(85.1%)、2017年2,172件(90.2%)である。

なお、取消審判関連規定において、日韓商標法は一見似ているようにみえるが、韓国では類否判断時に分離観察の傾向が強く、日本より類似範囲が広い方であるのに加え、日本商標法50条3項本文(*1)のような規定をおいておらず、審判請求前の当事者間の協議が容易でないため取消審判請求のニーズが高い点などを考慮すれば、不使用取消を請求されるリスクが相対的に高い韓国では登録商標の管理に注意を払う必要があるといえる。

*1 第五十条
3 第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であつて、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。《後略》