2018-07-17

韓国:高麗人参のパッケージ図案商標の模倣に巨額の損害賠償 - Kim & Chang

私たちの身の回りには、オリジナル製品のパッケージ図案(トレードドレス)の特徴的な構成やモチーフをそのまま借用し、非類似の文字商標を付した「Me too製品」があふれているが、最近韓国では、代表的な紅参(*1)ブランドである「正官庄」製品のパッケージ図案を模倣した後発業者のMe too製品に対して商標権侵害と認め、製品廃棄だけでなく4億ウォンを超す巨額の損害賠償までを命じる法院の判決が下され話題になっている(ソウル中央地方法院2018年6月15日言渡し2017ガ合500971判決)。

事件の経緯
原告である韓国人参公社の「正官庄」は業界首位の紅参製品ブランドで、原告は本件侵害標章(類似のパッケージ図案に「正官庄」に代わり「高麗紅参」と表記)を付した紅参エキス製品を販売してきた業界3位の後発企業を相手取り、商標権侵害ならびに不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(「不正競争防止法」)第2条1号イ目所定の不正競争行為に該当することを理由に本件訴えを提起した。

判決の要旨
法院は判決で、原告の本件登録商標3と被告の本件侵害標章は角が丸みを帯びた四角形の図案、その中の「紅参」、上段の太極文様、下段の左右対称の2つの高麗人参の図柄、その下のリボンと「KOREAN RED GINSENG」の文字、および色の対比が類似するところ、本件侵害標章は本件登録商標の出所表示として識別力を有する主要要素をほぼ具備しているため、高麗人参および紅参製品の一般需要者の立場から全体的、離隔的に観察したときその外観および観念がきわめて類似し、同一・類似の商品に使用する場合、商品出所の誤認混同を生ずるおそれが十分であるので商標権侵害が認められるとして侵害の禁止と侵害品廃棄を命じる一方、原告が主張した侵害期間のあいだに被告が侵害行為により得た利益額に相当する約4億5千万ウォン(約4,500万円)の損害賠償を命じた。

これと関連し、被告は本件登録商標3の要部は「正官庄」で、残りの部分は識別力がないため両標章は類似しないと主張したが、法院は本件登録商標3においては「正官庄」だけでなくパッケージ図案の各構成部分の結合もそれ自体で識別力を有する要素であるため、本件では両標章を客観的、全体的、離隔的に観察することが妥当であるとして被告の主張を斥けた。
さらに、本件侵害標章に「高麗紅参」という文字が記載されているとしても、紅参製品において「高麗」や「紅参」は大韓民国の紅参製品という意味以外には特に識別力を有さず、その記載だけでは一般需要者が本件侵害標章を本件登録商標と別個の出所表示と認知するのは難しいとして原告に軍配を上げた。

コメント
上記判決で対比された両標章は、文字部が相違するうえに識別力が弱いように思われるパッケージ図案の各構成要素にもいくつかの微細な差が存在するにもかかわらず、商標権侵害であるとして巨額の損害賠償まで認めたところ、同判決は業界でヒット商品が生まれるとそのパッケージのトレードドレスの特徴的な構成やモチーフを巧妙に模倣し、まったく異なる文字商標を付して販売するMe too製品が横行する風潮に一撃を与えた判決として示唆するところが大きい。

韓国では今年7月18日から施行される改正不正競争防止法でトレードドレスが保護対象として明文化されるが(*2)、当該法上のトレードドレスとして保護されるためにはかなりの水準の国内周知著名性の立証が要求され、同法のデッドコピー条項にも3年の除斥期間が存在する。それに対し商標権は、パッケージ図案を識別力がある態様、または識別力がある文字と結合した態様で(類似の先登録がないことを前提に)簡単に登録を受けることができ、更新により半永久的に存続して、類似範囲にまで民事・刑事上の権利行使が可能な強力な権利である。したがって、今後Me too製品への効果的な対応策としてパッケージ図案の商標出願を通した権利化を積極的に考慮してみる必要がある。

*1 :紅参(こうじん):高麗人参の皮をはがさずに蒸気で蒸した後、自然乾燥させたもの。
*2: 第2条(定義):
 1.「不正競争行為」とは、次の各目のいずれかに該当する行為をいう。
ロ. 国内に広く認識されている他人の氏名、商号、標章、その他の他人の営業であることを表示する標識(商品販売・サービス提供方法または看板・外観・室内装飾等の営業提供場所の全体的な外観を含む)と同一又は類似のものを使用して、他人の営業上の施設又は活動と混同を生じさせる行為
ハ. イ目又はロ目の混同を生じさせる行為のほか、非商業的使用等大統領令で定める正当な事由がないのに、国内に広く認識されている他人の氏名、商号、商標、商品の容器・包装、その他の他人の商品若しくは営業であることを表示した標識(他人の営業であることを表示した標識については、商品販売・サービス提供方法または看板・外観・室内装飾等の営業提供場所の全体的な外観を含む)と同一若しくは類似のものを使用し、又はこのようなものを使用した商品を販売・頒布若しくは輸入・輸出して、他人の標識の識別力又は名声を害する行為