2019-02-21

日本:注目裁判例、「立体商標ランプシェード事件」 - 工藤莞司弁理士

 「ランプシェード形状」について、立体商標に係る商標権の行使が認められた事例(「立体商標ランプシェード事件」東京地裁平成29年(ワ)第22543号 平成30年12月27日)

=商標法3条1項3号の無効理由存在の抗弁を排斥=

事案の概要 本件は、「ランプシェード」を指定商品とする立体商標(下掲左は正面図、登録第5825191号)に係る商標権を有する原告が、被告に対し、被告による各商品(下掲右は正面図)の販売が商標権侵害に当たると主張して、被告商品の譲渡等の差止め及びその廃棄並びに損害賠償を求めた事案である。これに対して、被告は、原告立体商標は商標法3条1項3号に該当して無効理由があると抗弁し、原告は商標法3条2項適用について主張、立証した。

判 旨 原告立体商標は、使用により自他商品識別力を獲得したものであるかについて検討すると、遅くとも昭和51年に販売が開始され、日本全国で約40年間にわたり継続して平成11年から平成26年までの販売数量は7万4627台であり、ヤマギワ又は原告日本法人が定期的に顧客に対して配布していた商品カタログ及び多数の出版物において原告商品が世界のロングセラー商品と掲載され、原告商品が平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞を受賞したことなど、これら原告商品の販売状況や広告宣伝状況等の事実からすると、原告商品は日本を含む世界のロングセラー商品として長年にわたり、原告やその関連会社が販売する代表的な商品として、インテリアの取引業者や照明器具等に関心のある一般消費者に認識されていると認めることができる。
以上によれば、原告商標は、原告商品の形状として使用された結果、原告の業務に係る商品であることを表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたといえる。したがって、ランプシェードの立体的形状である原告商標は、商標法3条2項に該当し、原告商標に同条1項3号の無効理由があるとは認められない。

解 説 本件は、立体商標に係る商標権侵害訴訟の初めての事案である。被告が、原告登録立体商標については、商標法3条1項3号の無効理由があると抗弁(39条で準用する特許法103条の3第1項の権利行使制限の抗弁)したため、この点が主たる争点になった。
裁判所は、3号該当を認めた上で、3条2項の適用について判断し、使用による自他商品識別力の獲得を認めたものである。原告提出の使用実績から販売台数や宣伝・広告や紹介状況、受賞歴等をもって認定した。因みに、原告登録商標も、拒絶査定不服審判(2015-764、平成27年12月15日審決)で、同じく3条2項適用により登録されたものである。
したがって、無効理由はなく原告の権利行使は適法で、そして、原告立体商標と被告商品形状に係る標章は同一として侵害を認め、被告に譲渡等の差止めと、約400万円を超える損害賠償が命じられた。