2019-07-29

ロシア:「赤の広場」商標訴訟で裁判所の判決が? - GORODISSKY & PARTNERS

背景
「赤の広場(ロシア語:Красная площадь)」は、ロシアの首都モスクワの都心部にある観光名所で、企業がそのような名称を自社の利益のために使用する傾向は理解できる。、「LLC赤の広場」という企業が、「赤の広場」とほとんど関連がない役務(金属、鉱石、建設資材、保険に関するサービス)で36類と37類に「赤の広場」商標を登録した。そして2年前に倒産した。その後、ロシア連邦中央部に位置するバシコルトスタン共和国の首都ウファ市出身の起業家Azamat Ibatullin氏は、「赤の広場」商標の譲渡を申請した。 
Ibatullin氏は悪名高い商標不法取得者で、「TOP GEAR(トップギア:イギリスBBCで放映されている自動車番組)」など多くの商標を登録していたが、「TOP GEAR」商標では、BBCと紛争になっていた。「赤の広場」商標を取得しようとした理由は不明である。

特許庁の決定
特許庁は、申請人が該商標を付して商品を生産し販売した場合、ウファ市がモスクワから約2,000キロ離れているため、消費者が生産地を混同する虞があるとして、譲渡を認めなかった。特許庁は、赤の広場はロシアで有名な広場であり、不変の意味合いを持ち、モスクワ中心部の場所を明確に示していると述べ、さらに該商標には、正教会のドームのイメージが含まれていたため、赤の広場と明らかな関連性が生じると述べている。
起業家は特許庁の決定に対して上訴した。

裁判所の判決
商品の品質も特性も製造者の居住地に依存しないため、商品の製造者の所在地は消費者にとって重要ではないとし、裁判所は特許庁の主張を退けた。重要なのは商品の製造場所であり、製造者の所在地とは異なりうるとして、商標の登録によって消費者を誤解させることはないとの判断を示した。

コメント
裁判所の判断には次のような疑問が生じる:製造地が重要な要素であるならば、この場合商品の生産がモスクワで行われることを意味するのだろうか?-ただし、問題の商品が主に重工業に関連しているため、これはありそうもない。もし製品に「赤の広場」商標が付された場合、議論はあるかもしれないが、必然的に地理的な場所との誤った関連付けが生じることになる。
特許庁が起業家の名前で商標の譲渡・移転登録を拒絶したとき、特許庁はより現実的な対応をしたように思えるが、特許庁は、サンクトペテルブルクにある「Chicago(シカゴ)」という美容室の訴訟では別の立場を採っている。
なお、裁判所の本判決は2019年5月に下されたものだが、まだ上訴される可能性はある。

本文は こちら (Russian court issues controversial decision in RED SQUARE case)