2019-11-15

EU:言語の違いは観念の類似性にどう影響するか - Novagraaf

先行する権利を持つ商標権者は、外観的、称呼的、観念的に類似することを理由に、混同を生じるほど類似する商標の登録に異議を申立てる事が出来る。しかし、観念が類似するとは何を意味し、どのように確立するのだろうか? EU一般裁判所で最近争われた「Carnilove」と「Meatlove」の裁判をLouise van de Mortelが解説する。

先行するEU商標「Carnilove」の権利者は、EUに出願された「Meatlove」商標に対して、外観、称呼、観念が類似するとして混同の虞を理由に、異議を申立てた。EUIPO(欧州連合知的財産庁)の異議部は、観念が同一である上に外観と称呼もある程度類似すると査定したが、上訴において、EUIPOの審判部は、問題の商標間で観念を比較することはできないとして、異議部の決定を破棄し異議を認めなかった。しかしながら、10月にこの決定はEU一般裁判所によって覆され、審判部は観念が類似するかを判断しなければならないと判じた。 

混同の虞を理解する
問題は、関連する公衆が出所を間違えるかどうかだが、混同の虞の成立には、指定商品や指定サービス同様に外観、称呼、観念的な類似性が評価される。この評価は、商標の全体的な印象に基づくもので、特に識別性や要部が考慮される。

外観および称呼的な類似性
判決において、EU一般裁判所は、文字の外観はほとんど類似していないという審判部の判断を支持した。文字長がほぼ同じで、要素「love」が共通するものの、文字の始まりは異なっている。つまり、文字要素「meat」と「carni」である。これらの文字の発音は完全に異なっており、要素「meat」が1つの音節であるのに対して、「carni」は2つの音節であるため、商標間の称呼的類似度は高くない点でも審判部の判断は正しいと評価された。

観念的な類似性
観念的な類似性では、言語的意味が同じまたは関係するかどうかが評価される。例えば、異なる言語で同じ意味を持つような場合だ。EU一般裁判所は、審判部が観念的な類似性の評価で誤ったとの認識を示した。

「Carnilove」対「Meatlove」におけるの観念的類似性
審判部は、「love」以外の部分が特定の意味を持つか、関連する公衆が知っている言葉である場合にのみ、標識が単語要素に分解されると判じたが、EU一般裁判所は、関連する公衆(EU商標の場合EU全体)によって簡単に理解される「love」のような基本的な単語要素を含む標識には該当せず、関連する公衆が問題の文字商標を2つに分断し、1つが日常語と理解される言語に関係し、もう1つが残りの要素を構成するような場合、関連する公衆は「Carnilove」を「carni」と「love」の2つの単語要素に分解すると判じた。

審判部は、「Carnilove」商標が全体として意味を持たないため標識を比較できないとし、関連する公衆が「love」という単語要素を認識したとしても、「Carnilove」は「Carni(carnivores:英語で肉好きの人の意味)とlove(愛)」を意味し、「Meatlove」は「肉と愛」を意味するため、標識は観念的に異なると判じたが、EU一般裁判所は、両方の文字が肉に関連する何かに対する愛情の感覚を示しているため、英語圏の人々にとって、観念的な類似性が存在するとして、審判部の決定を支持しなかったものの、観念的な類似度は高くないとも指摘した。

言語の問題
審判部は、出願商標の単語要素「carni」の他の意味を調べなかった。特に、「carne」や「carni」という単語は、特定のロマンス語(ラテン語から派生した言語群)で「肉」を意味する。EU一般裁判所は、単語要素「carni」が「肉」を意味するイタリア語の複数形であり、スペイン語で「肉」を意味する単語「carne」に非常に似ているとの提起を受け、「関係する公衆」は欧州連合全体であるため、英語を話す人々だけでなく、イタリア語やスペイン語を話す人々も考慮する必要があるとの認識を示し、審判部が観念的な類似性に関する潜在的な関連性を見逃したと認定した。

審判部は、イタリア語またはスペイン語を話す人々が単語要素「meat」の意味を実際に理解しているかどうかも調べたはずだが、出願人の商標にある「meat」が簡単な英語の単語であるため、イタリア語やスペイン語を話す人々を含むEU全体の消費者に広く知られている場合、問題の標識について観念的な類似度が高いと見なさなければならない。 

この事例は、EU商標の観念的類似性の比較には、関連する公衆が不可欠であることを示している。これには、類似性を評価するときに、英語だけでなく他のヨーロッパ言語も考慮することが含まれる。

本文は こちら (Overcoming the language barrier: EU trademarks and conceptual similarity)