2020-02-12

韓国大法院「商標使用許諾条件に違反した商品でも一律に商標権侵害であるとはいえない」 - Kim & Chang

最近韓国の大法院で、商標の通常使用権者が使用契約の付随条件に違反して商標を使用したケースにおいて、一律に商標権侵害と認めることはできないという判決が出された。

この事件は、ファッションブランド商標権者(A)が通常使用権者(B)に時計製品に関する商標ライセンスを付与し、その条件としてディスカウントショップおよびインターネットショッピングモールで販売する場合には商標権者の許諾を得るという制限を設定していたが、通常使用権者(B)がこのような販売地の制限約定に違反して販売者(C)に納品し、販売者(C)が再び合意されていないインターネットショッピングモールに製品を販売したところ、これに対し商標権者(A)が販売者(C)を相手取り、このような販売行為は商標許諾条件に違反した行為であるため自らの商標権が侵害されたとして刑事告訴を提起した事件である。

これに対し法院は、次のような理由で上記のような販売者(C)の販売行為は商標権侵害ではないと判断した。
①原則的に商標権者またはその同意を得た者が韓国国内で登録商標が表示された商品を譲渡した場合には、当該商品に対する商標権はその効力が及ばず、
②もし通常使用権者が契約に基づく指定商品、存続期間、地域などの通常使用権の範囲を超えて商標を使用した場合には商標権に対する侵害が成立するといえるが、
③通常使用権者がたとえ契約上の範囲を超えて商標を使用したとしても、その侵害の当否は契約の具体的な内容、商標の主な機能である商標の商品出所表示および品質保証機能の毀損の有無、商標権者が商品販売によって補償を受けたにもかかわらず追加的な流通を禁止する利益、および商品を購入した需要者の保護の必要性などを総合して判断しなければならず、
④本件商標権者である被害者は商標権使用契約に基づいて通常使用権者から商標権使用料の支払いを受けるなど金銭的補償が成立したと認められるため追加的な流通を禁止する利益が高いとはいいがたい反面、取引を通して商品を購入した需要者の保護の必要性は認められるので、
⑤結局、本件において商標権はその目的を達成したものとして消尽したとみなければならない。
⑥併せて、販売者(C)の故意の有無と関連し、販売者に商標権侵害罪の罪責を問うためには、商標権者(A)と通常使用権者(B)との間の契約条件に違反して商品が供給されたことを販売者が認識していなければならないが、検事が提出した証拠だけでは、販売者(C)がこれを認識していたことが合理的な疑いを持つ余地がないほど証明されたと認めることはできない。

本件は商標ライセンス契約において販売地制限約定に違反した場合、これを商標権の侵害行為と認めること自体を否定したものではないが、具体的な事案において違反のあった使用条件が付随的なものか、そしてこれによる商標権者の被害と需要者保護の必要性のどちらがより利益が高いかを総合的に考慮して判断した事例として、商標ライセンス業務の参考にできるものと思われる。