2020-02-26

EU:Sky vs SkyKick事件における欧州司法裁判所の判断を歓迎 - EUIPO

EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、2020年1月29日の訴訟C-371/18、Sky and Othersの予備判決(preliminary ruling)の要請に対する欧州司法裁判所(CJEU)の判断を歓迎するとの見解を公表した。
EUIPOは、CJEUが指定商品・サービスの明確性と正確性の要件および悪意の概念に関する重要なガイダンスを提供したとし、以下のように説明した。 

CJEUへの質問に対する主な問題は次のとおり;
1. 指定商品・サービスの記載が明確性と正確性を欠いているという理由で、一部またはすべてで商標を無効にできるか。 
2. 1.の質問に対する答えが「イエス」の場合、「コンピューターソフトウェア」などの広い意味の用語が明確性や正確性を欠いていると見なされるか。 
3. 出願人が特定の指定商品・サービスに関して商標を使用する意思がない場合、悪意により商標を無効にできるか。
4. 3.の質問に対する答えが「イエス」の場合、使用する意思がない商品に関して、商標が悪意で出願されたと結論付けることができるか。

1.の質問に対する回答において、CJEUは、その商標が指定する商品・サービスの明確性と正確性が欠いているという理由だけで、一部またはすべての商品・サービスで欧州連合商標および国内商標を無効にできないとの判断を示した。CJEUは、第一理事会指令 89/104と理事会規則No.40/94の無効に関する絶対的理由の包括的リストを示し、そこには指定商品・サービスの記載に関する明確性や正確性の欠如などが無効事由にないことを確認した。 さらに、商品・サービスを指定するために使用される用語の明確性と正確性の欠如は、理事会規則第7条(絶対的拒絶理由)や第一理事会指令規則第3条(拒絶または無効の事由)に規定された絶対的事由のいずれにも該当せず、公共の秩序に反する(contrary to public policy)とも言えない。  
1.の質問に対する回答が否定的であったため、CJEUは2.の質問に対して回答する必要がなかった。
 
3.の質問に対して、CJEUは、多くの条件が満たされた場合、商品・サービスに関連して使用する意図のない商標の出願は、悪意を構成する可能性があるとした。この点に関して、CJEUは、商標出願人が出願日にその商標の使用を示すことも、正確に知ることさえ要求されておらず、出願人が出願時に指定した商品・サービスに対応する経済活動を行っていなかったということを根拠に悪意を推定できないとの見解を示した。 
ただし、商標登録により保護を受ける商品・サービスに関して使用意思のない商標登録は、出願人が、公正な競争を行うことを目的としてではなく、第三者の利益を損なうことを目的として、または特定の第三者を標的とすることなく、原産地を示す重要な機能のように商標の機能に含まれること以外の排他的権利を取得することを目的として出願するという兆候に矛盾なく直結することが明らかであれば、悪意を構成する可能性がある。

4.の質問に対して、CJEUは、商標の重要な機能に合致して使用意思の欠如が商標登録によって保護を受ける商品・サービスに関連する場合、その商標の無効性はそれらの商品・サービスのみが対象になるとの見解を示した。

EUIPOは、これらの明確化が法的確実性の確保に寄与するものと考えている。
1.の質問に対する答えは、欧州連合商標(EUTM)所有者に、指定商品・サービスの用語が明確性と正確性を欠く可能性があるということのみに基づいて、用語を指定する登録商標の無効アクションの対象にはならないという安心感をもたらす。また、無効とする絶対的理由には指定商品・サービスの明確性と正確性の欠如を含まないという現在のEUIPOの慣行を追認するものだ(欧州連合商標審査基準、パートD「取消」、3.絶対的無効事由を参照)。

さらにCJEUは、「コンピューターソフトウェア」という用語の明確性と正確性を問題としなかったため、ニース分類の類見出しの一般的表示の共通運用におけるEUIPOと加盟国官庁の明確性と正確性に欠ける用語に関する慣行ついても問題視していない。

またCJEUは、出願人が理事会規則第59条(1)(b)に規定する使用意思のない商品・サービスを指定した商標登録における悪意の根拠とする状況を明確にしたと、EUIPOは考えている(欧州連合商標審査基準、パートD「取消」、3.3.2.1悪意の存在を示す可能性が高い要因の3(c)を参照)。

この点に関して、EUIPOは、過度に長い商品・サービスのリストを申請する前に、出願人にはビジネスニーズを慎重に検討するように助言したい。特に、出願人は、排他的な権利の範囲を拡大する意図のみで、または商標の機能以外の目的で、商品・サービスを指定しないように助言する。この原則に従わない出願人は、悪意に基づく無効アクションに直面し、登録の全体または部分的な無効化に苦しむだけでなく、訴訟費用を負担する可能性がある。

本文は こちら (Decision of ECJ Case C 371/18, Sky and Others)