2020-03-12

日本:位置商標で商標法3条1項3号該当とした審決が知財高裁でも支持された事例 - 工藤莞司弁理士

「石油ストーブ位置商標事件」令和2年2月12日 知財高裁令和元年(行ケ)第10125号

事案概要  原告(出願人)は、下掲の位置商標について、登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、不服審判請求(2018-7479)をしたが不成立審決を受けたため、その取消しを求めて知財高裁へ提訴した事案である。

 本願の「商標の詳細な説明」は、「・・・位置商標であり、石油ストーブの燃焼部が燃焼する時に、透明な燃焼筒内部の中心領域に上下方向に間隔をあけて浮いた状態で、反射によって現れる3つの略輪状の炎の立体的形状からなる。図に示す黒色で示された3つの略輪状の部分が、反射によって現れた炎の立体的形状を示しており・・・」とする。

判 旨  本願商標は「三つの略輪状の炎の立体的形状」(本願形状)を付する位置が特定された位置商標である。本願形状を採用することにより、対流形石油ストーブの燃焼筒内の輪状の炎が四つあるように見え、・・・本願形状は、美感を向上するために採用された形状である。また、原告特許の特許請求の範囲の記載からして、本願形状は、暖房効果を高めるという機能を有するものと認められる。
そうすると、本願形状は、その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲を超えているものということはできず、本願形状からなる位置商標である本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であると認められる。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号の商標に該当する。商標法3条2項該当性についての本件審決の判断に誤りはない。

コメント 本件裁判例は、平成27年から登録が認められた新しいタイプの商標の位置商標に係るもので、初めての知財高裁の判断例である。位置商標とは、「商品等に標章を付する位置が特定される商標」であり、標章は文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であるため、識別性や類否の判断については、在来商標とは異ならないとされている。
 本件事案では、指定商品石油ストーブに係る本願商標は、立体的形状として捉えられ、美感向上のためのもので、暖房効果を高める機能を有すると認識されるとして、識別性がないと認定、判断された。審決と同旨である。原告特許の請求範囲の記載が引用された点で特徴的である。位置商標として付される標章が指定商品との関係から、その商品の品質や内容等を表すと認識されるのであれば識別力具備しないとの結論は自然である。
 実務例が見えない中で、『「ホログラム商標」「位置商標」の審査動向』について、他の新しいタイプの商標と共に最新パテント誌(Vol.73 No.2 67頁以下)に掲載されている。