2020-09-01

日本:注目裁判例、色彩商標「オレンジ色」について、使用による識別力の獲得が否定された事例 - 工藤莞司

(令和2年6月23日 知財高裁令和元年(行ケ)第10147号「オレンジ色彩商標事件」)

事案の概要  原告(出願人)は、指定商品7類「油圧ショベル」に係る下掲の色彩のみからなる商標について、登録出願(商願2015-2999)をしたが拒絶査定を受け、 査定不服審判(2017-2498)を請求した処、特許庁は不成立の審決をしたため、 原告は、知財高裁に対し、その取消しを求めて訴訟を提起した。審決の理由は、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、同条2項に該当しないというものである。

判 旨 原告は、本願商標の色彩を車体の少なくとも一部に使用した油圧ショベルを長期間にわたり相当程度販売するとともに、継続的に宣伝広告を行っており、本願商標の色彩は一定の認知度を有しているとはいえるものの、その使用や宣伝広告の態様に照らすなら、本願商標の色彩が、需要者において独立した出所識別標識として周知されているとまではいえない。そして、本願商標は、輪郭のない単一の色彩で、建設現場等において一般的に採択される色彩であること、油圧ショベル及びこれと需要者が共通する建設機械や、油圧ショベルの用途とされる農機、林業用機械の分野において、本願商標に類似する色彩を使用する原告以外の事業者が相当数存在していること、油圧ショベルなど建設機械の取引においては、製品の機能や信頼性が検討され、製品を選択し購入する際に車体色の色彩が果たす役割が大きいとはいえないこと、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるべき公益的要請もあること等も総合すれば、本願商標は、使用をされた結果自他商品識別力を獲得し、商標法3条2項により商標登録が認められるべきものとはいえない。
 「HITACHI」又は「日立」の文字について、「HITACHI」、「日立」は著名商標であり、原告の油圧ショベルに接する需要者は、これらの文字部分に着目するのが自然である。そして、建設機械や農機、林業用機械の分野において、オレンジ色が広く採用されていることに加え、・・・建設機械等の取引においては、製品の機能や信頼性を検討し、どのメーカーの商品であるかを慎重に確認した上で商品を購入するのが通常であると考えられることも踏まえると、需要者が、「HITACHI」又は「日立」の文字を考慮することなく、商品の車体色であるオレンジ色のみに着目してその出所を識別するとまではいえない。

コメント 本件事案では、原告は、3条1項3号該当を認め、3条2項適用のみを争ったが、否定された事例である。本件では、色彩自体の商標が有する問題点の多くについて争われ、すべて原告・出願人にマイナスの判断となっている。この種色彩は、取引界のみならず指定商品の同種商品に多用されていること、色彩自体の登録は業界他者への制限となり得ること、そして、使用文字商標との関係である。単色の色彩のみからなる商標については、使用による識別力の獲得を含め、極めて困難であることを示している。