2020-09-08

米国:「ティファニー」の名称で指輪を販売したコストコ、ティファニーに逆転勝訴 - Marks & Clerk

2020年8月24日(月)、米国連邦巡回区控訴裁判所は、「ティファニー」の名称を付したダイヤモンドの婚約指輪の販売を巡って、ホールセールクラブチェーンのコストコに2100万ドル(約22億円)の賠償を命じた一審判決を覆した。 

争いの発端は、2013年に宝飾店大手ティファニーがコストコを商標権侵害で訴え、模倣していると非難したことだった。 
ティファニーから連絡を受けたコストコは、「ティファニー」の標識を店頭からすべて撤去した上で、ティファニーがダイヤモンドセットの指輪の一般名称になっていると主張した。コストコでは、関連期間中に3000人以上の顧客がティファニーのセットリングを購入したと推定された。

2015年、一審の地方裁判所はティファニーの略式判決(summary judgment:完全な裁判なしに裁判所が下した判決)の申立てを認めた。地裁はコストコの反訴を退け、コストコの商標権侵害と模倣を認定した。陪審員はティファニーに1,380万ドルを与えたが、裁判所はそれを2,100万ドルに増額した。これには、懲罰的損害賠償金825万ドルと、侵害の疑いから生じたティファニーの逸失利益の3倍である1110万ドルと利息が含まれた。 

しかし、2017年にコストコは陪審員に対して十分な説明を行う機会を奪われたと主張して上訴した。コストコは、「ティファニー」の使用を、ティファニーの模倣指輪ではなく、特定のスタイルの指輪を表現するためのもので、侵害にはあたらないと主張した。

二審で、3人の第2巡回裁判所判事は、全会一致でコストコを支持する判決を下した。判事は、19世紀後半にチャールズ・ルイス・ティファニーが6本爪のダイヤモンドセットの婚約指輪を開発し、販売したと認めた。しかし、それ以降、多くの広告や辞書、業界誌などで、このタイプのダイヤモンド・セッティングの形状を「ティファニー・セッティング」としている。 

コストコが提出した証拠は、コストコのダイヤモンドリングの潜在的購入者が「ティファニー」の使用によって実際に混同するかどうかという真の疑問を提起するものと認め、さらに、判事は消費者がコストコの指輪をティファニーで製造されたものではないことを、特にその価格、包装、書類、購入場所を考慮して認識することができるであろうと指摘した。

控訴審判事は、コストコによる「ティファニー」の使用が単に指輪セットの種類を記述したものに過ぎないのか、それとも実際に侵害しているのかという点で事実上の争いが残っているとし、陪審員が証拠と真価を検討することなく、本件を決定すべきではなかったとの判断を示した。

現在、この訴訟は連邦地方裁判所に差し戻され、コストコが「ティファニー」を記述的に使用したものかどうかという問題が検討される。現時点でこの問題の結論は出ていないが、この事件により、有名ブランドが特定の分野で一般的な名称になる可能性があることのリスクと、問題の対処に最初から専門家の法的アドバイスを求めることの重要性を思い起こさせるものとなった。

本文は こちら (Costco wins appeal against Tiffany – Tiffany and Co et al v Costco Wholesale Corp, 2nd U.S. Circuit Court of Appeals, No. 17-2798)