2020-10-21

インド:特定の類における商標登録の権利はその類全体に及ばないとした判例 - R. K. Dewan & Co.

2017年に施行された商標規則における改正点の一つに、出願前に商標の先使用を主張する場合の宣誓書提出の義務化がある。これは、事業体による根拠のない登録と権利者が商売をしていない分野における権利を取得し、権利者に後で高く売りつける転売や嫌がらせを防ぐためのものだ。ナンディニ・デラックス(Nandhini Deluxe)事件で、最高裁判所は、特定の類を指定した商標登録は、類全体ではなく、登録、使用されている商品・サービスにのみ限定されると判示した。

ミタル・エレクトロニクス(Mittal Electronics)対 スタージャ家電(Sujata home appliances (p) Ltd and Ors.)事件で,デリー高裁は ナンディニ事件に沿った判断を示し,以前の暫定的な命令を訂正した。これにより、デリー高裁は、11類を指定して登録された「SUJATA(スタージャ)」の商標権者であるミタル・エレクトロニクス(以下「ミタル」)が浄水器、水ろ過器、逆浸透(RO)システムを製造・販売していなかったため、スタージャ家電に「SUJATA」商標を付した浄水器、水ろ過器、逆浸透(RO)システムの製造・販売を認めた。
ミタルはスジャータ家電が11類における「SUJATA」と「SUJATA Star」商標の権利を侵害していると主張して、スジャータ家電を相手取り、侵害およびパッシング・オフ(詐称通用)で提訴したもので、裁判所はミタルを支持して一方的差止命令(ex parte injunction)を認めた。その後、スジャータ家電は一方的差止命令の撤回と浄水器、水ろ過器、逆浸透システムの製造・販売の許可を求めた。スジャータ家電は、ライセンサーであるRajesh Kumar Bansal氏が2008年から「SUJATA」商標を使用して浄水器、水ろ過器、逆浸透システムを販売していて、ミタルはその事実を訴訟で隠蔽した上で、ミタルは11類に属するこれらの製品に「SUJATA」商標を使用しておらず、11類全体の権利を不当に主張しているに過ぎないと抗弁した。  

裁判所は審理を経て、一方的差止命令を撤回し、スジャータ家電が「SUJATA」商標を使用して浄水器、水ろ過器、逆浸透システムのみを製造・販売することを認めた。裁判所は、1908年民事訴訟法第XXXIX規則4のただし書きの通り、当事者が重要な事実を隠して一方的な命令を得ていた場合、裁判所は法的公正さの点からその命令を訂正することができると述べた。裁判所は、ナンディニ事件に依拠して、ある類を指定して標章を登録したからといって、その類全体の権利を所有者に与えたことになはならないと判じた。つまり、標章を付して販売・提供されていた商品やサービスに関してのみ権利を与えるというもので、今回のケースでは、ミタルは「SUJATA」商標を付した浄水器、水ろ過器、逆浸透システムを製造・販売していなかったため、これらの商品に関して仮差し止め命令を受ける権利を有しないとされた。 

本文は こちら (Water wars of Trademark)