2020-12-24

中国:最高裁、知財判決の執行に関する実施計画およびガイダンスを公布 - 北京路浩

 知的財産権に対する司法的保護を引き続き強化し、知的財産権判決を着実に執行するために、中国最高裁判所は2020年12月10日に、「知的財産権判決の執行に関する業務ガイダンス」と「知的財産権判決の執行に関する業務実施計画」をそれぞれ公布した。以下に両文書の主要内容について簡単に紹介する。

「知的財産権判決の執行に関する業務ガイダンス」について
 主要な条項において、民事、行政、刑事が大概通用できるので、以下は民事事件を中心に紹介する。

当事者の保全申請は訴訟前にも訴訟中にも可能
* 訴訟前:利害関係者は緊急状況で、即時に保全申請をしなければその合法的な権利に救済できない損害が起こる場合、訴訟提起前に被保全財産の所在地又は被申請人の住所又は案件管轄権のある裁判所に保全申請することができる。申請人は担保を提供しなければならず、担保を提供しなければ申請を拒絶する。
* 訴訟中:一方当事者の行為又はその原因で、判決を執行させにくい、又は当事者にその他損害を起こす場合、当事者は相手方の財産に対して保全申請をし、一定の行為の実施又は禁止を命じることができる。当事者が申請しなかった場合、裁判所は必要時に応じて保全の実施を裁定することもできる。裁判所は保全措置を施す場合、申請人に担保の提供を命じることができ、申請人が担保を提供しなければ申請を拒絶する。

強制的執行
* 当事者は法的効力が発効した法律文書を履行しなければならない。一方当事者が履行しない場合、相手方は管轄権のある裁判所に執行申請をすることができる。
* 外国裁判所から下された発効済みの判決・裁定に対して、中国裁判所に承認・執行される必要がある場合、当事者より直接に管轄権のある中級裁判所に承認と執行を申請することができ、又は両国間が締結した国際協議・条約又は互恵原則に即して、裁判所の承認・執行を申請することができる。
* 執行申請の期間は 2 年間とする。起算日は、法律文書に規定する履行期間の最後日より起算する。分割履行期間と規定される場合、各履行期間の最後日より起算する。履行期間を規定していない場合、法律文書の発効日より起算する。

被執行人の財産状況の確認
* 1)執行申請人からの情報提供;2)執行申請人は被執行人に財産状況を報告させようと命じることを裁判所に申請する;3)裁判所はオンラインシステムによって被執行人の資金、動産、不動産等について調査を行う

裁判所が講じられる執行措置
* 裁判所は、被執行人の財産を発見した後、状況に応じて、封印、押収、凍結、配賦、価格変更、第三者へ負債履行通知の発行などの措置を講じることができる。
* 裁判所は被執行人の銀行預金又は電子銀行預金を凍結する期間が1年以内とし、動産を封印・押収する期間は2年以内とし、不動産の封印および株式や知的財産権等の凍結は3年以内とする。
* 上記以外に、当事者は状況によって被執行人への消費制限、出国制限、不誠実リストの記入などを裁判所に申請することもできる。

執行中の救済
* 当事者、利害関係者は執行行為に法違反行為があると認識した場合、書面にて異議を申立することができる。
* 執行中に、非当事者は執行される標的物に対して、所有権又は執行を阻止できるその他の譲渡、交付による実体的権利を主張する場合、書面にて異議を申立することができる。

執行の終了
* 被執行人が執行される財産があれば、一般的に立案日から6ヵ月以内に執行を終了する。

「知的財産権判決の執行に関する業務実施計画」について
判決執行の質と効率をより向上する:
* 法に依って素早く被執行人の財産を探し、コントロールすること。
* 被執行人財産の確認・コントロールに向けるオンラインシステムの応用を強化すること。
* 被執行財産の評価を関連する法規定によって行うこと。
* 被執行財産の処置処分を関連する法規定によって行うこと。
* 罰金、拘束、消費制限、誠実信用懲罰などの措置を利用して、被執行人に判決を履行させる;同時に、執行中に各方の当事者の合法的権益をも配慮し、異議、復審など救済措置も保障する。
* 「最高裁判所が民事訴訟法の適用に対する法釈」の規定により、被執行人が履行しない行為義務を他人が代わって履行することができ、履行により生じた費用は被執行人が負担する。
* 執行の効率を向上するために、裁判所は案件の難易又は複雑さ等の特徴によってフレキシブルに処理する。
* 異なる地域へ執行に行く必要がある場合、法に依って案件執行処理システムにて現地裁判所に委託することができる。
* 市場監督、税関、知的財産権などの主管部門間の協力を強化すること。

知財判決執行の公開を推進する:
* 法に依って知財判決執行の公開を引き続き推進する。また、執行中に得た国家秘密、営業秘密、プライバシーなどを漏洩せずに厳守する。
* 執行情報公開サイトをより改善する。
* 当事者に案件の進捗状況、肝心な執行措置などの特定的な情報を公開することをより改善する。
* 知財判決の執行結果の四半期報告制度を設立する。
(出典:中国最高裁判所)

本文は こちら (Newsletter2020年12月号)