2021-01-08

工藤莞司の注目裁判例:包装容器に係る位置商標の識別力が否定された事例

(「包装容器位置商標事件」令和2年12月15日 知財高裁令和2年(行ケ)第10076号)

事案の概要 原告(出願人・審判請求人)は、指定商品「焼肉のたれ」について位置商標(右図参照)に係る登録出願をしたが拒絶査定を受けて審判請求(不服2017-10633)をした処、特許庁は商標法3条1項3号に該当し、3条2項適用を否定して不成立の審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した事案である。

判 旨 3条1項3号該当性 本願商標は位置商標で、包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形の立体的形状は、焼き肉のたれの包装容器について、機能や美観に資するものとして、取引上普通に採択、使用されている立体的な装飾の一つであり、その位置は、包装容器の上部又は下部が一般的である上に、その形状に、格別に斬新な特徴があるとまではいえず、商品の機能又は美観上の理由により採用されたものと予測し得る範囲のものである。
本願商標は、容器の胴部中央から首部にかけて配されており、指定商品が焼き肉のたれで、その下に商品名等が記載されたラベルが貼付されることは容易に予測され、そのような観点からも、本願商標を構成する立体的形状は、出所の識別ではなく機能や美観に資するものとして採択、使用されていると認識される。
そうすると、本願商標を構成する立体的形状は、同種の商品が、その機能 又は美観上の理由から採用すると予測される範囲のもので、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標で、3条1項3号に該当する。
 使用による識別機能の有無 本願商標使用商品は、ラベルに記載された「エバラ」や「黄金の味」の標章が需要者に強い印象を与え、需要者は、出所識別標識としてラベルの「エバラ」や「黄金の味」の標章部分に着目する。ラベル記載の標章や文字が需要者に強い印象を与え出所識別機能を果たしており、本願商標使用商品において、本願商標の立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められない。

コメント 本件事案では、ペットボトル型包装容器に係る位置商標の識別力の有無について争われ、使用による識別力の獲得も含めて否定したもので、知財高裁が審決を支持したものである。位置商標は、新タイプ商標ではあるが、標章の構成自体は、文字や図形等からなる商標と異同はなく識別力についての判断も異ならない。本願商標は、一般的に採用されている装飾的な模様の範囲内のものとして識別力はないとされた。
使用による識別力の認定、判断においては、出願人の使用商標には、「エバラ」「黄金の味」の文字がありこれらが識別力を発揮し、本願商標自体は識別力がなく、使用によっても獲得していないとされた。被告(特許庁長官)側の証拠の提出、採用が目に付く事案でもある。