2021-06-09

EU:「impossible」vs「incredible」。類否は?識別力は? - Novagraaf

5月5日、EUIPO(欧州連合知的財産庁)取消部(Cancellation Division)の「Impossible Burger」商標に対する無効審判の裁定を受け、「impossible」バーガーと「incredible」バーガーの争いについて、Loretta Dashorstが解説する。

ネスレ社は、2020年5月ハーグの地方裁判所が「Incredible Burger」のブランド名がライバル社の「Impossible Burger」と類似するとの判決を受け、ブランド名の変更を余儀なくされた。ネスレ社には4週間の猶予が与えられ、「Incredible Burger」を欧州連合から撤退させない場合の罰金は1日あたり25,000ユーロ科せられた。 

他方でネスレ社は、2019年3月18日に「Impossible Burger」商標に対する無効審判をEUIPOに請求し、先月EUIPO取消部は、この無効請求に対する裁定を行った。取消部は先月のハーグ裁判所と同様に、「Impossible Burger」は有効な商標であるとの結論を下したため、ネスレ社にとっては残念な結果となった。

無効審判
商標が保護されるためには、識別性を含むいくつかの要件を満たす必要がある。商標は使用されている商品やサービスを単に説明するものであってはならない。
5月5日の裁定で、取消部は、「Impossible Burger」という言葉の組み合わせは、第29類の食品を単に説明するものではないと判断し、特に、「impossible」という文字は、特別な品質や優れた品質を表すものではなく、本来の意味(つまり、肯定的な「あり得ない」ものとして)以外の一般的な使用においては、否定的な意味合いを持つとの認識を示した。 

ネスレ社は、消費者が標章から「人々が存在しないと考えるハンバーガー」と認識するだろうと主張したが、取消部は、この解釈にはいくつかの精神的ステップが必要だとし、消費者は、そのような関連性を見出すために想像力を働かせる必要があり、すべての消費者がこのような精神的ステップを踏むとは限らないと説明し、絶対的な拒絶理由に関するEU商標理事会規則(EUTMR)の第7条1項(c)は、商品の特定の特徴に関して示唆的または連想的な表現にすぎない用語には適用されないという「Cine Action」の判決を踏襲した。また、「何かが存在し得ない」という概念は、実在する対象物の特性を実際に記述したものではないとの見解を示した。

また、ネスレ社は、本商標が単なる宣伝のメッセージであり識別力に欠けると主張し、「不可能な事に取り組む(Doing the impossible)」、「世界のフードシステムを変革するために共に働く(together we’re working to transform the global food system…)」、「肉が好き?肉を食べよう。「Impossible™」は、味、香り、牛肉のようなものをすべて提供する。不可能を可能にするのは植物だ(Love meat? Eat meat. Impossible™ delivers all the flavour, aroma and beefiness. It’s just plants doing the Impossible.)」など広告での使用例を挙げ、「Impossible Foods」の中の「impossible」という文字が「あり得ない」という意味を販促的、賛美的に使用していると主張した。 

しかし取消部は、該商標で「impossible」という言葉が漠然と不可能だと認識される動機付け表現の一部として使用されているのではなく、特定の名詞の修飾語として使用されているため、販促用のスローガンや一般的な言葉による使用とは異なると判断した。
また取消部は、「植物は不可能を可能にする」というような宣伝文句に「Impossible Foods」商標を混ぜて使用するということは、薄氷を踏むようなものだとも認めた。これは、プロモーションビデオでも同じだ。
とは言え、取消部は前述のスローガンと当該商標との間には違いがあり、消費者はその違いを認識し商標権者のテキストやビデオをちょっと面白いダジャレとして見ていることを考慮し、その結果、ネスレ社の無効請求は全面的に棄却された。

おいしい教訓(Tasty takeaways)
商標権者にとって、ブランドの再構築はコストがかかり、混乱さえ引き起こされることがある。そのため、クライアントには一般的な言葉や賛美的な言葉から派生した用語ではなく、特徴的な名称に基づいて、強力なブランド名を作成し、製品の発売に間に合わせるようにアドバイスしている。

本文は こちら (‘Impossible’ versus ‘Incredible’: The sequel)