2021-07-21

インド:デリー高等裁判所が知的財産部門を新設 - R. K. Dewan & Co.

デリー高等裁判所は、裁判所内に知的財産部(IPD)を設置する旨の通達を出した。デリー高等裁判所のこの動きは、2021年4月に知的財産権審判部(IPAB)を廃止するための条例が可決されたことを受けたものだ。この条例の下では、IPABに与えられていた権限が高等裁判所に移されることになるが、知財関係者の間にいくつかの懸念が生じていた。

通達によるとIPDは以下の事件を取り扱うことになる。
1. 令状請願などを含む知的財産権紛争に関する民事訴訟、CMM、RFA、FAOの原審と控訴審を扱う。ただし、第二審(Division Bench)が扱う事件は除かれる。
2. 知的財産権に関するすべての新規訴訟はIPDによって処理される。
3. 1999年商標法、1957年著作権法、1970年特許法、2000年意匠法、1999年商品の地理的表示(登録及び保護)法、2001年植物品種及び農民の権利の保護法、2000年半導体法の規定に基づき、IPABに申請可能であった商標登録官、特許管理官、著作権登録官の判断を不服とする上訴、取消請求など。

デリー高等裁判所によると、約3000件の事件がIPABからIPDに移管されるとのことで、IPDには、現在策定中のIPDデリー高等裁判所規則が適用される。デリー高等裁判所での特許紛争の裁定手続きを規定する「デリー高等裁判所特許規則」を作成するための委員会が設立されており、規則の第一次草案は利害関係者に対して意見募集が行われている。
また、IPDでの原審手続きは、2018年の「Delhi High Court (Original Side) Rules」や、商業紛争に適用される1908年の民事訴訟法の規定、2015年の商業裁判所法の規定にも準拠することになる。

デリー高等裁判所によるIPDの創設は歓迎すべき動きだが、懸念される点は、その体制の迅速な確立と必要な人材の雇用・補充にある。能力のある裁判官を任命し、その分野の専門性を高めるためのトレーニングの提供はIPDに期待されていることであり、これができなければIPABに代わる組織を創設する目的が失われてしまう。

日本、マレーシア、英国、タイ、中国など様々な国に存在する知的財産紛争を専門的に扱う知的財産部の創設はインドにとって重要な一歩といえよう。知的財産権に関する効果的な処理部門が他の高等裁判所でも設置されることが期待される。

本文は こちら (A MOMENTOUS STEP: Delhi High Court Creates a Separate Intellectual Property Division)