2021-07-15

中国:ウォッチングの効果、地理的表示を組み込んだ商標の登録を拒絶 - Marks & Clerk

中国国家知識産権局商標局(CNIPA)はこのほど、中国企業が出願した地理的表示(GI)を組み込んだ商標に対して、絶対的な拒絶理由に加え、第三者の先行商標と類似することを理由に登録を拒絶した。

2019年7月、中国の企業がウイスキーを含む33類の様々な酒類を指定して(上図)の商標を出願した。「ISLAY(アイラ)」は、スコットランドのインナー・​ヘブリディーズ諸島の最南端の島の名前で、GIとして保護されている。2010年に中国品質監督・検査・検疫行政総局(the General Administration of Quality Supervision, Inspection and Quarantine of China)は、「スコッチ・ウイスキー」をGIとして保護すると決定した。「ISLAY」はその保護対象地域として公式に記載されている。また、この公示では、保護対象地域で蒸溜されたウイスキーでなければ、保護された地域を標識として使用したり、包装、広告、販促に使用してはならないと規定している。

本願商標は、中国語の文字「艾雷」を含めた構成で、「艾(ài/yì)雷(léi)」は「ISLAY」の音訳として最も頻繁に使用されており、また本願商標の最初の中国文字「遇见」は単に「会う」という意味である。 

CNIPAの審査実務では、保護されたGIは言うに及ばず、著名な外国の地理的名称を組み込んだ商標の登録出願は、特に出願人や商品がその地域を起源としない場合、拒絶することになっている。しかし、本出願商標は不可解にも審査を通過し2019年12月に公告された。

当然のことながら、この商標の登録には異議が申し立てられた。スコットランドの2つの団体が、法定期限内に異議申し立てを行った。異議申立人は、The Scotch Whisky Association(SWA:スコッチ・ウイスキー協会)と「ISLAY MIST」という登録商標を中国で所有するスコットランドのウイスキー蒸留会社であった。Marks&Clerk北京事務所は、スコットランドのウイスキー蒸留会社を代理して本件を担当した。 

CNIPAは、「ISLAY」が著名なスコッチ・ウイスキーとして保護されたGIであり、出願商標は指定商品の産地、品質、特色について消費者を欺き、誤解させるものであるというSWAの主張を支持し、同時に出願商標とスコットランドのウイスキー蒸留会社の登録商標「ISLAY MIST」との類似性を認めた上で、蒸留会社が提出した異議申立も認める判断を下した。

原理的には、絶対的拒絶理由に反する商標出願を拒絶する責任は、本来当局が負うべきものだが、実際には、業務上の制約もあり必ずしもそうはならず、網の目をくぐり抜けてしまう可能性がある。中国の審査方式や基準は常に改善されているものの、今回のケースは、ブランドオーナーが自らの権利を継続的に監視し、今回のような例外的なケースに対処する必要性を示している。

本文は こちら (CNIPA held trade mark incorporating Geographical Indication unregistrable)