2021-11-16

ベネルクス:オランダのWendy’sが米国のWendy’s を欧州から締め出した - Knijff Trademark Attorneys

「ゼーラントから来た田舎者がこんなことをするとは思わなかっただろう。でも、うちのボスは信念のある人だから、自分の店にどんな名前を付けていいか、どんな名前を付けてはいけないかなんて、誰にも言われる筋合いはないんだよ」。

オランダのゼーラント州にある小さな町ゴーズのテーブル2つだけのスナックバー(軽食屋)「Wendy’s(ウェンディーズ)」の店長の言葉は明解だ。米国のファーストフード・チェーン「Wendy’s(ウェンディーズ」との商標権争いは根が深い。「Wendy’s」対「Wendy’s」;オランダのゴーズでゴリアテにダビデが戦いを挑んだ。そして、ここでも小さな者が大きな者を倒した。 

この争いは1997年にさかのぼり、それ以来、法廷で争われてきた。米国のWendy’sはヨーロッパに進出しようとしていたが、その野望はゼーラント州の上陸拠点で打ち砕かれた。  
 
先週、最初の小競り合いから24年が経過したのち、オランダの控訴裁判所は、オランダの「Wendy’s」商標は確かに有効な商標であり、米国Wendy’sがヨーロッパで登録した商標に対抗するための抗弁として認められるという判決を下した。判決では、オランダの「Wendy’s」商標は、レストランサービスに対しては有効とされた一方、商品であるハンバーガーや揚げたスナック菓子に対しては有効ではないとされた。

通常の使用
裁判所は、スナックバーのWendy’sが「Wendy’s」商標を通常の方法で使用していたと認めた。通常の使用及び真正な使用は、商標法において非常に重要な概念であり、商標が通常に使用されていない場合、商標は無効とされる可能性がある。真正な使用の要件は、判例法などで詳しく示されている。

レストランサービスの場合
何が真正な使用に当たるかは、関連市場(この場合はオランダのファーストフード市場)によって大きく左右される。オランダでは、ファーストフード市場は、ファーストフード・チェーンではなく、近所にある小さなスナックバーが(いまだに)重要である。

ゼーラント州のWendy’sは、オランダにある典型的なスナックバーで、その商標を店頭、領収書、レジ袋、広告などで使用していた。これはごく普通のことで、ベネルクスの他の地域や国で使用されていなくても、近所のスナック「Wendy’s」のベネルクス商標は、商業的に全く通常な方法で使用されていたため、ベネルクス全体のレストランサービスに対して有効と判断された。

食品の場合
しかし、オランダの「Wendy’s」商標は、レストランサービスだけではなく、ハンバーガーや揚げたスナック菓子などの食品も指定して登録されていた。そして、それらの商品に関連するオランダの市場は非常に異なっている。概して、製造者や卸売業者にとっては、個人の消費者にではなく、企業に大量に販売する国際的又は国内の大企業である。個々にハンバーガーやスナック菓子を顧客に販売することは、スナックバーのベネルクス商標として通常の商業的使用とは見なされず、食品に対するオランダの「Wendy’s」商標は無効とされた。

娘の名前
スナックバー「Wendy’s」は、オランダにある普通のスナックバーであり、オランダにある普通の食品製造業者ではないため、他の似たような名前のスナックバーやレストランに対しては異議を唱えることができるが、スーパーマーケットなどで米国のWendy’sがハンバーガーやその他のスナック菓子を販売しても異議を唱えることはできない。 

結局のところ、10億ドル規模の米国のファーストフード・チェーンにとっては、法廷の内か外かに関わらず、今後も紛争が続く可能性のある挫折となった。両社の社名には、創業者の娘の名前が付けられているが、このような共通点があることで、両者の距離が縮まるかもしれない。そして、どちらの娘も自分の父親が成し遂げたことを誇りに思うだろう。

本文は こちら (Dutch Wendy’s keeps Wendy’s USA out of Europe)