2022-04-19

OECD/EUIPOの「危険な模倣品」報告書で明らかになった健康、安全、環境リスク - Novagraaf

今年3月に発表されたOECD(経済協力開発機構)とEUIPO(欧州連合知的財産庁)の共同調査は、新型コロナウィルスの大流行が不正取引の新たな機会となることで、既存の問題をいかに悪化させたかについても論じている。Alexandra di Maggioが調査結果を解説する。 

OECDは、多くの加盟国政府に政策的助言を提供する役割を担っており、EUIPOと協力して、健康、安全、環境に危険を及ぼす可能性のある模倣品の規模と傾向に関する最新情報を掲載した報告書「危険な模倣品(Dangerous Fakes)」を発行した。報告書は、主に2017年から2019年にかけて税関で押収された模倣品情報と、権利行使・偽造防止分野の専門家へのインタビューに基づいて作成された。

EUの危険な模倣品
模倣品業者は、消費者の健康に全く関心がなく、環境への影響などはさらに気にかけていない。そのため、見かけはよくても不必要に危険を伴う製品を低価格で提供することに躊躇はない。
すべての模倣品は消費者にリスクをもたらす。しかし、EUIPO/OECDの調査は、危険な模倣品とは何かを決定するための2つのアプローチで構成されている。

(1) 一般的なアプローチは、特定の安全基準、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)および米国SHOP SAFE ACTの規制を受ける製品はすべて対象とするものである。このグローバルなアプローチでは、衣料品、自動車部品、光学・医療機器、医薬品が最も危険な模倣品であると報告されている。
このような危険な模倣品は主に中国(香港を含む)から輸出されているようで、中国からの製品が押収品全体の4分の3以上を占めている。危険物を含む小包の主な仕向地はEUと米国であり海上輸送が大半だが、今回は特に湾岸諸国への輸送が目立って多くなった。
(2) 狭義のアプローチは、食品、医薬品、化粧品、および安全に関する警告やリコールの対象となることが多い製品のみを対象としたもので、模倣品の製造国、仕向地、出荷手段について、一般的なアプローチと共通する結果が得られている。
特に、香水・化粧品、衣料品、玩具、自動車部品、医薬品は、危険な模倣品の中で最も多い分野であり、これらの商品のほとんどは、やはり中国(全世界の税関押収品の55%)と香港を製造地とし、押収された危険物の60%は郵便で送られており、押収額の点では、依然として海上輸送が主流になっている。

本調査で2017年から2019年にかけて危険性のある模倣品の押収が7万件、押収額は2019年だけで75兆米ドルと、対象製品の世界貿易額の約16%に相当することが分かった。この数字は、特定の製品をのみ対象にしていることを考えると衝撃的だ。

新型コロナウィルスの大流行が模倣品に与える影響
「危険な模倣品」は、新型コロナウィルスが世界的に流行する前の統計や調査に基づいている。しかしながら、パンデミックが、特に医薬品、ワクチン、マスクの偽物、さらには一部のサプライチェーンの混乱と需要の変化によるアルコールの分野で、これまでの傾向を悪化させていることは明らかだ。そのような要因は、模倣品業者に新たな機会を提供している。

また、世界中で押収されたEU向けの危険な製品の60%はオンラインで購入されたもので、オンライン取引にも注意する必要があることを再認識させるものとなった。最前線にいる政府や公的機関を支援するために、皆が協力する必要があることは明らかだ。

本文は こちら (New OECD/EUIPO study reveals risk of counterfeits to health, safety and the environment)