2022-09-22

EU:関連する公衆(relevant public)は誰かを確認することが重要 - Novagraaf

運動関連の商品やサービスに使用されている「Spinning」商標をめぐる10年にわたる紛争について、EU一般裁判所が判決を下した。Aurélie Guetinが解説する。

2022年7月6日、EU一般裁判所は、Aerospinning Master Franchising 対 EUIPO(欧州連合知的財産庁)の判決を下した(Case T-246/20)。これは、運動関連の商品・サービスを指定した「SPINNING」商標の取消に関する10年にわたる訴訟で2度目の判決である。

背景
2000年4月、自転車、男性用・女性用アパレル、靴、アクセサリー、機能的トレーニング機器など様々なスポーツ用品を販売するMad Dogg Athletics Inc(以下、Mad Dogg)は、EUで以下の商品・サービスを指定して「SPINNING」という文字商標を登録した。
9類:オーディオ及びビデオカセットテープ
28類:運動器具
41類:運動トレーニングの提供

Mad Doggの文字商標「SPINNING」は、商標理事会規則2017/1001第58条1項(b)を理由とするAerospinning Master Franchising Ltdによる取消を提起されるまで、12年間EUで登録されていた。請求の根拠は、「SPINNING」が「運動器具」と「運動トレーニング」で取引上の普通名称となったことであった。 

2014年にEUIPOの取消部は、「SPINNING」商標に関するMad Doggの権利を全面的に取消し、2016年に第5審判部は、28類の商品及び41類のサービスで「SPINNING」が普通名称になったとして取消を認めた。 

2018年第1回一般裁判所判決
2018年11月8日の判決(Case T-718/16)では、EU一般裁判所は、28類の商品及び41類のサービスに関する限り、審判部の決定を取消し、次のように判示した。

取消事由の適用性は、遅くとも取消請求日時点の状況を踏まえて検討されなければならない。
EU商標(EUTM)が1つの加盟国において識別力を失ったと立証された場合、その商標はもはや商標理事会規則で想定される効果を生み出すことができない。 
関連する公衆は、最終消費者だけで構成されているわけではない。関連市場の専門家、例えばジムやスポーツ施設、リハビリ施設の運営者は中心的な役割を果たしている。これらの事業者が審判部の評価から除外されるべきではなかった。
この判決は、EUTMの単一性を確認し、関連する公衆の一部として考慮されるべき事業者の役割を強調したという点で特に興味深いものとなった。

この判決を受けて、本件は第4審判部に差し戻され、2020年2月26日に審判部は取消部の決定を無効とした。

2022年第2回一般裁判所判決
当裁判所に提起された問題は、本件のような状況において、当該市場の特性と(T-718/16)判決から導かれた結論を踏まえて、ジム運営者、スポーツ施設、リハビリ施設などを含む専門家からなる関連する公衆によって主に認識される係争商標を考慮して、取消請求を棄却した第4審判部の判断が正しかったか否かである。 

一般裁判所は、2018年判決を踏まえて次のような判断を示した。「特にジムやスポーツ施設、リハビリ施設の運営者等の関連市場の専門家からなる公衆は、28類の商品市場において中心的な役割を果たし、41類のサービスでは最終消費者の選択に決定的な影響を及ぼすものだ」。

裁判所は、関連する判例法(Case T-419/17の2018年5月18日判決)を引用し、以下のように判示した。「購入者が商標であることを知らなくても、仲介者が購入者の購入の意思決定に決定的な影響を及ぼし、仲介者が商標の出所表示機能を知っていることがコミュニケーションプロセスの成功につながるのであれば、商標は出所表示として商標の機能を果たし続けることができる。これは、仲介者が購入の決定に決定的な影響を与える助言を行うことが関連市場において慣習となっている場合や仲介者が消費者のために実際に決定を行う場合である。([…] T-419/17, […] Paragraph 33; また、類推により、Backaldrin Österreich The Kornspitz Company, C-409/12, […] Point 59におけるAdvocate General Cruz Villalónの意見を参照)」。

この判決は、何らかの行動を起こす前に、関連する公衆を明確に特定する必要があることを示しており、今回の場合、誰が製品を購入し、誰がサービスを提供するのか、という確認が重要であることを示している。

本文は こちら (Defining the relevant public: Why the ‘Spinning’ trademark is still rolling)