2017-04-24

豪州:建物ブランドの構築 - DibbsBarker

知っておくべきこと
商業・小売施設や工業施設といった有形資産の価値にしか興味のない建物オーナーは、強力なブランド戦略によって得られる建物の付加価値を見落とすかもしれない。建物のアイデンティティを創造し保護することで、その建物のサイネージ・ライツ(signage rights:標識権)を戦略的に活用することもでき、建物オーナー自身の利益になるのはもちろん、その場所を占有するテナントにも商業的な優位性を与えることができる。最近のケースからも、商標登録することで建物のアイデンティティを確実に保護する一方、あらゆる細部に落とし穴が潜むため、ブランド戦略を慎重に作ることが重要だとわかる。建物オーナーの多くは、建物の価値を評価する際に、ショッピングセンターの高層階にあるプレミアムフロア・スペースや有名店舗に隣接するような有形資産特有の価値は即座に認識しても、よく練られたブランド戦略から得られる大きな利点を見落とすことがある。建物に対するブランド保護や標識権を利用しようと考えている建物オーナーは、その資産が持つ「隠れた」価値に驚かされるかもしれない。

建物をブランド化するわけ
「シティ通り71番地(71 City Street)のような単なる住所だけではない、認識され記憶に残る建物のアイデンティティを創造し保護することで、建物オーナーはその資産価値を大幅に高めることができ、ブランド化された建物には競争市場でその物件を他の物件と区別し、テナントを引付け獲得する可能性を高める力がある。また、テナントはその建物に対する注目度や名声を利用して、建物の価値からテナント自体のブランドを高めることもできる。「店舗はシティ通り71番地にある」というよりも「ブランド化された○○ビルにある」といった方が間違いなく注目される。
商標保護が重要
独自にブランド化された建物から得られる利点を真に享受するには、適切な商標保護が重要だ。商標登録によりオーナーは特定の商品・サービスに関する商標を独占権に使用できる。これには適切な商標出願戦略が必要である。
識別力のあるブランドとは
保護を求める商標(建物の名称やロゴ)は指定する商品・サービス分野で第三者のものと区別できなくてはならない。商標を登録できれば第三者による不正な標章の使用を差止める手段を持つことになる。
地理的名称を避ける
最近のAccor Australia&New Zealand Hospitality Pty Ltd (アコー)対 Liv Pty Ltd の事件を見ると、ブランドが地理的な名称ではなく、共通する遺産(heritage)の一部にもなっていなければ、建物オーナーは、管理、リース、メンテナンス、およびその他サービス等に関連する商標登録を検討すべきだとしている。アコーの場合、「HARBOR LIGHTS(ハーバー・ライツ)」商標は宿泊サービスとして識別力を持つと認められたが、「CAIRNS HARBOR LIGHTS(ケアンズ・ハーバー・ライツ)」商標には識別力がないとされた。なぜなら「CAIRNS HARBOR LIGHTS」商標には、サービスを提供する場所を直接的に示していたからだ。

慎重に標識権を検討する
標識権はリース契約でしばしば重要となる。事業の性質上、テナントの一部は小売店や駐車場の標識を必要とするが、建物オーナーはテナントに敷地全体の標識権を付与することで大きな利益を得ることができる。例えば高層ビルの屋上に付けるロゴ等。つまり、経営者はどのテナントに標識権を与えることで、他のテナントに与える商業的影響を注意深く判断し、将来のテナント候補にどう影響するかを注意深く検討すべきであろう。
特に考慮する必要がある点;
-建物のブランド、住所、ロケーション以上に、テナントのブランドから建物が知られるようになることを望むのか 
-標識権を与えられた有名テナントを持つことで建物が知られるメリットは、将来のテナントからもたらされるものよりも良いといえるのか
-重要なテナントとの長期的また実入りの良い賃貸借契約によって、標識権提供の裁量が影響されやすいままになるのか

教訓
建物ブランドの商標登録をすることで、建物オーナーはその資産の追加的な価値を引き出せる可能性ができる。そのため、商標保護を得るチャンスを最大限に生かすために、地理的な名称を避け、識別力のあるブランド(商標)を選択することに焦点を当てるべきである。さらに建物に付随する標識権から最大の利益を得るために、徹底した費用便益分析を行い、標識権が全体的なブランド戦略を損なうことなく、ブランド戦略を補完することを確認するべきであろう。また特定の状況における最良の商標出願戦略について専門家にアドバイスを求めることも必要かもしれない。

本文は こちら (Building brands by branding buildings)