2017-07-27

中国:悪意の商標出願に関する司法判断 - Novagraaf

2017年1月10日、中国最高人民法院は、「商標権の権利付与及び権利確認に関する行政案件の審理における若干問題についての最高人民法院の規定」を公布し、2017年3月1日に施行した。NovagraafのZhenghan Gongは、この規定によるブランド・オーナーへの影響と、新しい規定が裁判所によってどのように運用されるかについて説明する。

本規定は、善意の原則を採用し、先行商標の権利を保護するために、「悪意による」商標出願に対抗する手段として導入されたものだ。悪意の商標登録は、多くの国外ブランドが直面する課題であり、今年4月24日(世界知的所有権の日の2日前)に、北京知的財産法院は、将来にわたって悪意による商標出願の対抗手段について記者会見を開いた。

裁判所は、(「冒認的な」または悪意の商標出願の被害者となる)「正当な申請者」への弊害を避けるため、悪意の商標出願事件を審理する際に裁判官が考慮すべき判断基準を定めた。

記者会見後、北京知的財産法院は、以下の事例を含む悪意の商標出願の典型例となる18例を発表した。

  • 代理人によって出願された著名商標
  • 名声を持つ先使用商標の出願
  • 使用目的のない大規模な商標出願
  • 有名人の名前の出願

発表された事例:
「使用目的のない大規模な商標出願」に類型化される事例は重要で、このような登録は、「その他の違法手段」による商標登録として、商標法第44条と最高人民法院の規定第24条によって基本的に禁止されている。

  • 商標法第41条:「登録された商標が第 10 条,第 11 条,第 12 条の規定に違反しているか,又は詐欺的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を取得したときは,商標局は当該登録商標を取り消す。その他如何なる組織又は個人も,商標評審委員会にそのような登録商標を取り消す裁定を請求することができる。」
  • 規定第24条:「商標登録の秩序を乱し、公益に害を及ぼし、公的資源を不適切に使用する者、または、詐欺以外の手法を用いて不正な利益をもたらす者に関して、裁判所は、「その他の違法手段」に該当すると判断できる。」

この分類に該当する事例は以下のとおり;

* Victoria’s Secret 対 Qing Peng Cosmetic Ltd

Qing Peng Cosmetic Ltdの商標登録(登録番号:9924701、2012年登録、商品区分3類)

2014年、香水「Sheer Love」を製造するVictoria’s Secretは、上記商標の無効申立てを申請した。この申請は中国商標評審委員会(TRAB)によって棄却された。しかし、北京知的財産法院に控訴され、上記商標は取り消された。裁判所は、商標出願人が700件を超える商標出願を行い、その一部を売却したと認定した。これらの商標登録に対して、Victoria’s Secretは、100件以上の異議申立てと20件の無効申立てを行った。裁判所は、Qing Peng Cosmetic Ltdの大量の商標出願が公益に害を及ぼし、公的資源を不適切に使用するものだとして、「その他の違法な手段」に該当するとしてVictoria’s Secretの主張を認めた。

* 資生堂 対 Mr Ma Wanchun

Mr Ma Wanchun の登録商標(登録番号:5086142、2005年登録、商品区分26類)

2009年に、怡丽丝尔 ELIXIRの所有者である資生堂(複数区分に登録)は、上記商標に対して無効申立ての申請を行った。この申請は中国商標評審委員会(TRAB)によって棄却されたが、上訴され北京知的財産法院が上記商標の取り消しを認めた。

この事件では、Mr Ma Wanchunが問題商標の出願のほか、杜莎夫人 (マダム・タッソー、Marie Tussaud)など多くの著名商標を含む50以上の商標を出願していたことを、裁判所は認定した。裁判所は、資生堂が提出した証拠が、仮にその著名性や複数区分にわたる保護によるメリットを受けていることを証明するには不十分であったとしても、Mr Ma Wanchunの商標出願は、著名な使用標章を模倣し、使用の目的なく未登録の区分に商標を登録するもので、それらは「その他の違法な手段」に該当すると判じた。

*Goat-EE Co Ltd 対 France Oushang International Group Co Ltd

中国企業 France Oushang International Group Co Ltd(香港で登記)の登録商標(登録番号:13014848、2014年登録、商品区分25類)

2015年にSAKAYORIの商標所有者である日本企業Goat-EEが上記商標に対して無効申立てを申請し、TRABによって支持された。北京知的財産法院は、登録商標の取消しを確認したが、出願人が問題の商標のほか、外国で評判の高い商標と非常に類似している多くの商標(例:18類の “TATOOSH”、25類の “碧丝黛丽 B.STYLISH”, “卡门法拉 CARMEN CINEFRA”、“朱丽尔敦 JULIET DUNN”、“斯法尼卡雷拉 STEFANIA CARRERA”、“尼科马克 NICOLAS & MARK”、“弗曼诺伊 HUMANOID”、20類の“KENZO”など)の登録も明らかになった。裁判所は出願人がこれら商標を販売する意図で登録した商標であると認定した。

大きな前進:
これらの判決で、北京知的財産法院は悪意の商標出願が、市場における善意の商標出願や商標の使用の原則に違反するもので、これらの判例は悪意の商標出願との闘いにおいて重要な進展が見られた証明であり、中国の知的財産法院は悪意の行為と闘うために大きな前進を遂げていることを示している。

本文は こちら (Chinese IP Court takes measures to stop bad faith trademark filings)