2017-10-11

ロシア:拒絶された文化財に係る商標出願 - GORODISSKY & PARTNERS

ロシアの有名企業であるRamon Confectionaryは、指定区分30類の商品に関して商標出願(番号2013705310)を申請した(下図左)。

出願された図形商標は、「プリンセス・オルデンブルク宮殿(Princess Oldenburg’s Palace)」の文字を含んだ宮殿のイメージと「ノビリティ・マンション(Nobility Mansion)」という文字がイメージの下に記載されている。 

この商標出願は拒絶された。文字要素「オルデンブルク宮殿」と図形要素が、中央ロシアにあるヴォロネジ近郊の小さな町ラモン(Ramon)にある19世紀後半の邸宅であるオルデンブルク宮殿の一部を表していることを根拠に拒絶されたものだ。

この邸宅はロシア連邦の記念碑的建築物として文化財登録(3600268000)されている。そのため、商標出願で指定する商品を独占する手段として商標登録することは公共の利益に反するものとされた。 

出願人はロシア特許商標庁の査定に対して、神秘的な邸宅を背景にした女性のイメージは、見る人にとても好意的な印象を与えるものであり、神秘的で秘密の思いを引き出すものであると主張し、芸術的な部分は、出願人の依頼で絵を描いた画家、Oksana Andreevaの絵画の一部を表しているものであると付け加えた。出願人は、以前画家と結んだ契約書を証拠として提出した。 

出願人はまた、出願商標は実在する建築物の正確な写真の複製ではなく、商標に描かれている絵は画家の知的創造の結果であり創造的な芸術作品だ。背景の塔は要部ではなく、見る人の注意は手前にいる2人の女性に向けられると強調し、庭に座っている2人の女性こそが要部であるとも主張した。

商標部の図形要素は文字要素「ノビリティ・マンション」によって説明されており、宮殿の塔は神秘的なイメージを表し、消費者は女性達がどこから来たのだろうかと考えさせる。

しかし、特許紛争評議会は出願人の主張を認めず、要部の1つは塔のある宮殿の一部である図形要素であると指摘し、文字要素「プリンセス・オルデンブルク宮殿」はあまり重要ではなく、位置的にも大きさも消費者の目にほとんど届かないと判断した。

オルデンブルク宮殿は、ロシア連邦文化遺産番号3600268000を持つロシア連邦の文化遺産であり、その建物は景観と相まった記念碑となっている。また、宮殿はロシア皇帝に近しい所有者が所有する中央ロシアで唯一のものであり、特許紛争評議会は、オルデンブルク宮殿の複合施設がロシア国民の文化遺産であり、ロシア連邦の特別な文化的価値として尊重されていると信じるに足る理由があるとした。

1996年のロシア連邦法第36条には、「ロシア連邦博物館」の展示物およびコレクション、博物館の建物などを利用した印刷物、記念品、その他の大量の製品および消費財や、博物館の敷地や名前、シンボルの使用は博物館の許可を得て行うものとする、と定めている。

出願書類には、出願人にそのような許可が与えられているとは記載されていなかったため、商標登録は最終的に拒絶されたのだが、上記の文化遺産は、ロシアの大多数の人に知られているわけではないことに注意する必要がある。出願人自身は、出願商標に名称「オルデンブルク宮殿」という名前を付すことによって、結果的に審査官に拒絶しやすくさせてしまった。出願人は審査官がその場所を簡単に特定できるヒントを審査員に示してしまった。文字要素がなければ商標登録できたかもしれないが、利害関係人による商標取消し申請がないとは保証されない。

(補足:ロシア連邦民法第4法典第7編知的活動の成果及び識別手段に対する権利の第1483条(商標の公式登録の拒絶理由)第4項に「ロシア連邦国民の文化遺産又世界の文化及び自然遺産の特に貴重な客体の公式名称又は絵並びにコレクション及び基金に所在する文化的価値の有る像と同一であるか又は混同を生じる程に類似する商標は,国家登録を受けられない。ただしこのことは,前記の客体の所有者でない者であって,所有者又は所有者により明示的に授権された者の同意を得てないものの名義で登録が求められている場合に限る。」とある)

本文は こちら (CULTURAL HERITAGE TRADE MARK APPLICATION REJECTED)