2018-07-13

ペルー:不使用取消を戦略として使うときの留意点 - OMC Abogados & Consultores

商標の使用は商標権者の義務であるが、必ずしも履行されていないものもある。特にアングロ・サクソン法と比較してペルー商標法は、制定法であり登録の原則に従うもので、つまり商標の使用を登録要件とせず、経済主体に対してこれまでに使用したことのない、決して使用しない、または一時的に使用するための商標を登録することを可能にしている。
このため、世界の多くの法律では、商標の不使用による取消しを規定しており、つまり真に商標を使用する意思のある経済主体が商標の登録をできるようにしている。不使用による商標の取消しは、すでに登録されている同一または類似する商標の存在を否定するための手段でもあり、使用されていない商標に基づいてなされた異議申立に対する防御手段にもなる。

アンデス共同体委員会の産業財産権に関する一般規定決議第486号第165条は、「加盟国の少なくとも1カ国において、取消の手続きが開始された日に先立って継続して 3 年間、商標が権利者、被許諾者、又はこの目的のために権限が与えられた他者によって、 正当な理由なく使用されなかった場合、法的資格を有する国内官庁は、利害関係を有する当事者の要求に応じて、商標の登録を取り消さなければならない。」(全部取消) 。また、「商標の不使用が、商標登録の対象となる商品又は役務のうち1つ又はいくつかのみに影響する場合、登録に含まれた商品又は役務のリストからの削減又は制限が命じられ、その際、商標が使用されなかった商品又は役務が抹消される。そのためには、商品又は役務の同一性又は類似性が正しく考慮されなければならない。」(一部取消)、と規定している。
ペルー国家競争・知的所有権保護庁(INDECOPI)商標局が判例を示さなければならないほど一部取消しの解釈は複雑で、この手順において、権利者が提示した使用証明の適合性だけでなく、指定商品・サービスの同一性、類似性も考慮に入れなければならない。

一部取消しに関する第一の判例は、ニース分類第16類で「トイレットペーパー、ペーパータオル、ナプキン、紙ハンカチ、クレンジングペーパー、およびトイレットペーパーに類するもの」を指定した商標「PETALO」に関する決議番号1183 -2005 / TPI-INDECOPIであった。
その時点で商標局が定める商品・サービスの同一性や類似性を判断するための基準は以下のものであった。
* 商標の使用が、指定商品・サービスとして具体的に記載された商品・サービスについて証明されている場合、その特定の商品・サービスに関する商標登録は保持される。
* 指定商品・サービスとして具体的に記載されていなくても、指定された分類に含まれる他の商品・サービスに類似している商品・サービスについて商標の使用が証明されている場合は、商標登録は保持される。 

この判例は、決議番号2076-2016 / TPI-INDECOPIによって修正された。それは、ニース分類第8類で「手持ち工具のみ」を指定して一部取り消された商標「CORONA」で、登録が「肉屋の弓(bows for butcher)」に制限された。
第一審では、権利者が「手持ち工具」の分類に含まれる製品である「肉屋の弓」の商標の使用を立証したため、取消しの申立ては根拠がないと判断された。しかし、申立人は、商標の使用が「肉屋の弓」しか示されておらず、一般的に「肉屋の弓」と手持ち工具は異なるものとされているため、商標を特定の商品のみに制限して、あとの部分は取消すべきであると訴えた。
このシンプルだが明らかにとても強力な主張は、同じ分類に含まれるすべての商品・サービスを類似と認識すべきではない、という新しい基準を商標局に追加させることになった。例えば、「手持ち工具」のあるニース分類第8類に含まれている製品には「つめやすり」や「携帯用武器」もある。

これに関して、裁判所は以下のように判示した。
* 指定商品・サービスとして具体的に記載されていないが、指定された分類に含まれる商品・サービスについて商標の使用が証明されている場合であっても、その分類に含まれる他の商品・サービスと類似しないのであれば、特定の商品・サービスに関してのみ商標登録は保持される。

この決定は申立人(出願人)に有利に働いた。審査段階で、文字「CORONA」に対して、指定商品「つめ切り」が分類上「手持ち工具」に含まれるため、指定商品が類似すると判断されたが、その後、登録商標が一部取消され指定商品が「肉屋の弓」に限定されたため、商品間の関連はなくなり、第二審において、申立人は「つめ切りのみ」を指定して「CORONA」商標の登録を勝ち取ることができた。

この裁判により、不使用取消しは、既に登録されている商標と同一または類似する商標の登録を勝ち取るための信頼性の高い戦略といえるのか、消費者に誤解を与えることにならないのか疑問が出てきた。これらの質問に対して、商標局が消費者の権利を大切にする傾向が強いことを指摘しておきたい。そのため商品・サービスに関連する登録可能性の審査がとても厳格で、商品・サービスが同じ区分やジャンヌにあればなおさらだ。登録商標は指定された商品・サービスを保護するのが原則だからだ。

例えば、2018年5月20日に発行された決議番号0007548-2018 / DSD-INDECOPIには、ニース分類第25類で「男性用、男子用、女子用、女性用の下着」を指定し出願された商標「RAE」が、同じ第25類で「ブラジャーのみ」を指定した別の権利者により登録された文字「RAE」と図形の結合商標の存在により拒絶された。
当初、「衣類、履物、ヘッドギア」を指定して登録された文字「RAE」と図形の結合商標は、別の出願人からの取消しの対象となった。しかし、当該商標権者は「衣類」のジャンルに属する商標の使用を「ブラジャー」について証明したため、第2審で当局は判例を適用し、登録を部分的に取り消し、「ブラジャーのみ」に指定商品を制限した。
そのため、商標「CORONA」の場合とは異なり、指定商品に「ブラジャーのみ」が残ったことで、出願商標の指定商品と類似しているとみなされたため、出願人有利に働かなかった。

結論として、これらの判例は議論の余地があるものの、同一または類似する第三者の商標と共存することを推奨すべきでない。それによって消費者に混同の虞が生じる。しかし、公平な競争を望めば、商標の使用のより正確な現実を反映するようになるはずだ。
最後に、「CORONA」の出願人は運が良かったが、みんながこのような運を持っているわけではない。そのため、出願や取消申請をする前に、商標調査を行うことを勧めたい。「RAE」の出願人のように、戦略が裏目に出ることもある。

本文は こちら (TRADEMARK CANCELLATION FOR LACK OF USE, A STRATEGY NOT ALWAYS RELIABLE)