2019-09-04

ペルー:なぜ立体商標の登録は難しいのか - OMC Abogados & Consultores

ペルーでは、企業が立体商標を出願したり使用したりしている事例をほとんど知られていない。これはペルーだけの話ではないかもしれないが、立体商標を登録するにはいくつかのハードルを越えなければならないため、企業側に立体商標を出願するインセンティブが働かないのだ。
名前が示すように、立体商標は市場において他の競合他社のものと区別する商品の立体形状やそれらのパッケージまたはラッピングであり、アンデス共同体決議第486号(産業財産に関する一般規定)の第134条(f)は、文字、イメージ、音などと共に商品の形状、パッケージ、ラッピングも商標を構成することができると規定している。

Fernández Novoaは、立体商標を「容器(containers)、受容器(recipients)、包装(packaging)、商品の配置(arrangement of the products)、またはそれらの形状(shape)によって構成される」と定義しており、アンデス共同体の司法裁判所およびペルー国立知的財産保護機関(Indecopi)の知的財産に関する専門委員会(Specialized Chamber)の決定で繰り返し引用されている。
この定義に基づく立体商標の例は、ハーシーズのキスチョコレートで、商品自体は、このジャンルの他の製品にはないチョコレートの滴りや水滴のような固有で特別、独特な形状をしている。この立体商標はこのタイプの標識の保護が難しいメキシコなど幾つかの国で登録されている。

Carlos A. Cornejo Guerreroは、「一般に、国家およびアンデスの教義と法学においては、立体商標を商品またはそのパッケージの特定または任意の形態で構成される標章として定義する;つまりそれは、高さ、幅、深さを持つ立体のスペースを占める体積のある物体であると理解される」と述べている。
しかし、この定義は、商品やそのパッケージの形状には言及しているが、立体商標になりうる他の形態について言及していないため、Cornejo Guerreroは、立体商標を説明するためのより広い定義を以下のように提案した。「市場で類似する商品・サービスと識別・区別するのに役立つ立体形態で、一般的に、特定の形態の商品、その容器や包装、パッケージ、または受容器で構成される。つまり、商品を識別する立体形状だがその形態では構成されない、または市場で類似するサービスから識別しやすい立体形状(that three-dimensional form that serves to identify and differentiate products or services from their similar in the market. It may consist of particular forms of the products, their containers, wrappings, packages or recipients in general; in three-dimensional forms that distinguish products, but that do not consist in the form thereof, or in three-dimensional forms apt to distinguish services from their similar in the market.)」。

メルセデスベンツの「スリーポインテッド・スター」は、商品(この場合は車両)を識別する立体商標として、その形状やそのパッケージや包装から構成されていない明らかな例である。
サービスを識別する立体商標の例は、足に複数の洗浄道具を持つタコの立体形状で構成される米国の商標がある。これは洗車サービスを示している。

現在、立体商標はその他の特徴的な標識同様に、登録を可能にするためには識別力という条件を満たさなければならない。識別性に欠ける標識は登録されないことは明らかだ。
ただし、この条件に加えて、立体商標は、伝統的な商標とは異なり、他にも満たさなければならない要件がある。それらは;
* 商品やそのパッケージの普通の形状のみで構成されていない
* 問題の商品・サービスの性質や機能に決定づけられる形態や特徴で構成されていない
* 使用する商品・サービスに対して機能的または技術的な利点を提供する形態・要素のみで構成されていない
もちろん、立体商標の登録には相対的な拒絶理由も審査される。

次に、ペルーの法律で定められた要件を満たしていないために商標の登録を拒絶された例を紹介する。
商標の識別性の欠如および商品の通常の形態を構成するとして登録が拒絶された例を以下に示す。

No. 5115-2013/CSD-INDECOPIは、識別力の欠如を理由にDirection of Distinctive Signsに従い職権により商標登録が拒絶された。商標に適用された立体形状は、特定の出所を示す特異性がなく、また、識別性を与える可能性のある文字要素も図形要素もない。この査定にクロックス社(Crocs Inc.)は次のように反論した。
*出願商標は、その構成において、識別性を目的とした商品に関連する固有の機能を果たすことができる特異な特性を示している。
*履物の立体図面は固有の構成を示している。靴の上部は、かかとがなくサポートストラップのある1つの要素が足の甲を覆っている。靴の外形は、靴の内側の先端まで比例的にわずかに狭くなっている幅の広い上部を形成する。

一方、Indecopiの知的財産に関する専門委員会は、No. 0192-2014/TPI-INDECOPI6において、25類の商品、特に履物の市場では、出願商標に含まれるものに似た立体形態のものが存在するとして、査定を支持した。
この決定は、履物の形状・外観が前記商品に関連する弱い標識を構成することを強調し、差別的要素があれば、同一または類似する形状・外観を含む標識の共存が許可されるべきである。さらに、出願商標の靴底は、十分な識別力を持つ独自の要素が不足しているため、特定の出所表示に関連付けることができる特徴的な細部を持たない単純な形状であると、専門委員会は指摘した。

また、商品に対する機能性や技術的な優位性を与えるとして立体商標が拒絶されたケースもある。

台湾のChemmer社が、1類の標準名称「工業用接着剤」を指定した出願は、商標が市場で提供されている他の製品と区別できないという理由で、Commission of Distinctive Signsに従い拒絶された(No. 22682015/CSD-INDECOPI)。

知的財産に関する専門委員会は、査定を支持し以下のように判示した(No. 3112-2016/TPI-INDECOPI)。
「出願商標は消費者が出所を特定するのに十分ではなく、同様に、出願商標を構成する立体図形には、商品(工業用接着剤)のキャップを開きやすく側面の隆起したへり(ヒレのような)があり、これは機能性や技術的な特徴を形成するものだ(…)」
このように、専門委員会は、この立体形状の出願商標は、アンデス共同体決議第486号の第135条の(b:識別性に欠ける標章)および(d:製品若しくは役務に機能的若しくは技術的利点を提供する形状又はその他の要素のみからなる標章)の禁止要件の範囲内であると結論付けた。

立体形状が適用される商品・サービスに対して機能的または技術的な利点を提供する形状または要素のみからなる標章であってはならないという条件を満たすことについては、実際に、保護がかなり限定されている発明特許や実用新案として登録できる場合、無期限の保護につながる商標としてこのタイプの立体商標の登録が妨げられることになる。
前述の要件を遵守しなければならないため、出願人が立体形状の商標登録を勝ち取ることはとても困難であることがわかる。これらの商標の登録は識別力の欠如を理由に拒絶されることが多い。これを克服するためには、市場で差別化するための固有の特徴が必要である。

詳細は こちら (The Three-dimensional Marks, why is it difficult for them to be registered)