2021-03-22

英国:ティファールの「赤色の円」は識別力の欠如で商標登録を拒絶 - Novagraaf

2018年、フランスのキッチン用品メーカー、ティファールは、同社の特徴である「赤色の円」を英国で商標として登録することを申請した。登録が拒絶されたのは、識別力の基本的な要件を満たしていないためだと、Megan Taylorは解説する。

背景
ティファールは、2018年12月に英国知的財産権庁(UKIPO)に第21類のフライパン、シチュー鍋、キャセロール鍋、鍋類、クレープを焼くためのフライパン、焼き網、中華鍋を指定して商標出願を行った。図形商標として出願されたが商標登録されていれば、ティファールは、本出願の対象となる調理器具の中央にある「赤色の円」の使用について独占的な権利を得ていたであろう。UKIPOはEUIPO(欧州連合知的財産庁)とは異なり、出願時に商標種別を「位置商標」としていないことに注意が必要である。商標種別は単なる管理用に過ぎない。

UKIPOに出願された標章

識別力の欠如
商標としての基本的な要素は、消費者がある事業の商品・サービスを他者の事業の商品・サービスと区別できるようにすることである。ティファールのケースでは、審査官は商標に識別力がないとして、1994 年商標法第3条(1)(b)に基づいて商標の登録を拒絶した。この商標は「ありふれた(banal)」もので特徴がないため、商標として基本的な機能を欠いていると考えられた。

調査による証拠
暫定的拒絶通報を受けたティファールは、消費者調査という形で、識別力の主張を裏付ける証拠を提出しようとした。この段階では、審査官は「暫定的かつ非公式な方向性」的なアドバイスを提供する可能性はあるが、消費者調査で質問すべき設問についてのガイダンスを提供することはないことを考慮することが重要だ。

後天的な識別力
最終的な決定を下すにあたり、UKIPO は後天的な識別力を証明するための指針となる原則が示されている 「Windsurfing(訳者注:欧州司法裁判所が使用による自他商品の識別力を得る場合の条件についての指針を示した)」事件と、商標登録を目的とするには、商標が一つの企業との「関連性」や市場における部分的な「認知」だけで、商標に識別力があることを証明するのに十分ではないとする「KitKat」事件に言及した。ティファールは、自社の商標がすでに使用されており、購入時に消費者が商標を認識できることで差別化を図った。
また、UKIPOは、靴底から成る商標はサブブランドでありメインブランドと一緒に販売されている間は識別力を獲得することができないと判断された「ビルケンシュトック」事件への言及も行った。ティファールの場合、所有者が出所表示としてサブブランドを機能させているかが問題となった。

400人の調査対象者のうち60.25%が「赤色の円」をティファールと関連づけており、これはかなりの割合であったが、この証拠を基にした判断は、最終的には、「赤色の円」が商標として認識されていることを証明するものではなく、単に調理器具の分野における「認知度と関連性」を示す統計であったと判断された。
さらに、提出された証拠では「赤色の円」の技術的な機能に触れていなかったが、「赤色の円」には技術的な用途があり、適温を知らせるために使用されていたため、実際には恣意的なものではなかったことが当局によって明らかにされた。 

サブブランドの保護
商標保護を受けようとするサブブランドを作成する際に考慮すべき重要な要素は、他のブランドが伴わなくても、サブブランド標章だけで商品を他者の事業のものと識別できるようにしなければならない。それは、購入の意思決定を行う際に、メインブランドだけでなく、サブブランド標章が出所表示として消費者に認められるようになるために、可能な限り独自にサブブランド標章を使用するように勧めたい。

本文は こちら (Trademark trouble for Tefal’s red dot)