韓国特許庁が商標関連手続の簡素化と出願人の便益増進のために推進してきた「商標法に関するシンガポール条約(STLT-Singapore Treaty on the Law of Trademarks)」への加入が完了し、2016年7月1日に韓国について発効することになった。
韓国特許庁はこれまで、国内商標法および施行規則の改正を通して同条約への加入の準備を進めてきた。条約履行のための事項などはすでに国内法に反映されて施行中であるため、これによって新たに施行される制度はないが、同条約の発効は韓国が公式的にこれを国際社会に認める手続としての意味がある。
具体的には、同条約への加入により韓国で非定型商標(Non-Traditional Mark:視覚的に認識できない商標で、音や匂い商標をいう)が保護されるようになるほか、商標の出願・登録過程で出願人が手違いにより決められた期限を守れなかった場合にも救済手段を与えることを義務化して、出願人の権利が途中で消滅または死蔵化されるのを防ぐなど、出願人の便益の向上が図られる。例えば商標出願に拒絶理由があり審査官が意見提出通知書を発したが、与えられた期間内に答弁できなかった場合、現在はただちに拒絶決定となるが、条約加入後は追加の答弁期間(最小2か月)が与えられる。特にシンガポール条約ではインターネットを利用した電子出願方式を自由に選択することができ、出願人が任意に作成した出願書であってもその内容が国際標準書式に一致する場合には適法な出願と認め不利益がないようにし、ユーザーフレンドリーな規定へと一歩前進した。
参考に、同条約は2006年にシンガポールで開催された「改正商標法条約採択のための外交会議」において採択され、現在米国、英国、フランスなどをはじめとする45か国が加入している。シンガポール条約は手続の迅速化よりも出願人の権利を優先視する国際商標条約で、1994年に採択された「商標法条約」から一層アップグレードされた国際的標準を呈示するものとして評価を受けている。