2016-09-23

商標の真正な使用(フルーツ・オブ・ザ・ルームのケース)- by Novagraaf

欧州連合商標(EUTM)では、商標がEU域内で指定する商品・役務に適切に使用されていないと、取消アクションに脆弱な場合がある。取消には商標登録後5年間の猶予期間があるが、5年経過後は商標の真正な使用(Genuine use)証拠を示さないとその登録が取消される事態を招かないとはいえない。

真正な使用(Genuine use)について、欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union)は、商標が登録された形態で指定商品・役務の出所表示として外向きに使用されたことを示す事実や状況があれば商標が真正に使用された、と判じている。外向き(outward)とは、必ずしも消費者を指すものではなく、商標権者の志向する事業マーケットに関連するものとしている。また欧州連合商標規則(EUTMR)は、商標が登録時の形態と異なる形態で使用されていても、異なっている部分によって商標の識別性が変わらない場合は、真正な使用であるとしている。もし継続する5年間、指定する商品・役務で商標の真正な使用を証明できないと、当該登録商標の全部または一部で登録を取消されることになる。そのため、商標の使用証拠を継続的に集めておくことは重要である。例えば、使用日の付いたパッケージ、ラベル、価格表、カタログ、請求書、写真、新聞等メディア広告などが証拠となるであろう。

フルーツ・オブ・ザ・ルーム社(米国の衣料品メーカー)は、商標 ’FRUIT’ を2006年5月に25類(衣類、履物、被り物)でEUに登録した。この商標に対してドイツのTAKKO Holding社が取消を申請した。EUIPO取消部(Cancellation Division)によると、フルーツ・オブ・ザ・ルーム社の提出した証拠が消費者に向けられた商標の使用を示すには十分ではなかったため、’FRUIT’ 商標の使用は認められなかった。そしてEUIPO審判部(Board of Appeal)も取消部の判断を支持した。しかしながら、EUの一般裁判所(General Court)は、EUIPOの2016年7月裁定を支持せず、審判部には、使用条件を満たすための商標の外向きの使用が消費者を指すわけではないという事実を見落とす、という誤りがあり、また審判部がグローバルな観点から証拠の評価を行わなかった、として審判部の裁定を破棄した。

本文は こちら (Fruit (of the Loom): Trademarks and the genuine use requirement)