2016-10-13

ファッション業界とIP(知的財産)- by Novagraaf

ミラノで開催された2016年AIPPI総会「ファッションとIP(知的財産)」分科会でエルメスの知財ディレクターは「IPはお金の無駄ではなく投資である」と論じた。ファッションや衣服のデザインのコピーが企業にとって大きな悩みであることは驚くべきことではない。ファッションや衣服のデザインが真似されることが一般的に見過ごされるのはこの業界固有の問題かもしれない。しかしながらデザイナーの創造的成果物は知的財産であり保護しなければならない。

ファッション・小売業界では、速いペースで変化する業界の特性が、ファッションや衣服、アクセサリーのデザインの保護に注意を払ったり、専任の担当者を置いたりしない理由とされている。流行りの商品などは店頭に並べるやいなや完売し、新商品や低価格商品の回転率を上げることへの注力が求められる。このような場で法的侵害行為対策を持ち出しても、アクションするときには当該商品の生産が終了している、ということにもなってしまう。ややもすれば海賊品を踏みつけて鬱憤を溜めることになる。しかしながらこのような状況は変わりつつある。デジタル技術の進歩や生産場所の極東移動に加えて、模倣品の増加がファッション・ブランドにも知的財産の重要性に関してフォーカスを当てるようになってきた。

現在の侵害行為のほとんどはデザイナーの著作物や未登録の意匠が対象で、価値があるものでも、侵害を証明するのが難しいため、エンフォースメントも困難になる。もし登録した意匠権であれば、侵害を受けた権利者に、より明らかな法的救済手段を与えることができる。意匠の登録費用は比較的安いので、たとえ商標のライフスパンが短いとしても検討に値するのではないだろうか。著名なファッション・ブランドの多くは、消費者の心に留まる象徴的なスタイルやモチーフで評判になり成長したものである。例をあげれば、ルブタンの赤い靴底、バーバリーのチェック柄、リーバイス501、レイバンのアビエーター・サングラス、ドクターマーチンのブーツ、ハワイアナスや最近ではUGGブーツなど。これらのブランド商品はより長いスパン使用されるのは明らかであり、積極的な保護とエンフォースメントが求められる。新しいファッションデザインの売出しまでには多くの時間、リソース、創作性が必要であり簡単に第三者にフリーライドを許してよいものだろうか。企業の創作と革新を保護するための知的財産法がある。ファッション業界のための知財チェックリストを以下に提案する。

  • 商標登録で企業名称(デザイナー名称)、商品名称を保護する
  • 意匠登録で商品の形状や模様等を保護する
  • 委託して作られたデザインの著作権と意匠権の譲渡を受けられるようにする
  • 知的財産権の使用許諾を与える第三者の使用によるメリットを受けられるようにする
  • 模倣品を監視し、模倣品が見つかった場合適切なアクションを取る
  • 新製品の開発で第三者の権利を侵害していないか調査する

本文は こちら  (Keeping fashion front of house)