2016-10-12

商標の類似に見るアンチテーゼ- by R.K.DEWAN & Co.

商標法では2つの標章の類似関係を見るとき、商標の一部を分離観察するのではなく、一体不可分で判断するというルールがある。また一方、裁判所はしばしば商標の要部を観察して商標の類似を判断している。一見するとこの2つは矛盾するようだがそうとも言えない。デリー高等裁判所の「M/s P.K. Overseas Pvt. Ltd. v M/s Bhagwati Lecto Vegetarians」事件を見る。

この裁判の原告は‘India Slaam’と‘Al Habib’の2商標を所有し、被告は‘Al Salaam’を商標として使用していた。原告の申立ては、被告が原告商品をパッシング・オフしている、というものであった。原告は‘India Slaam’商標を1985年から2009年まで、‘Al Habib’商標を2009年からコメの販売の分野で使用している。一方、被告は2015年に‘Al Salaam’をコメの販売に使用した。第一審の裁判官は、‘Al Salaam’は‘India Slaam’と‘Al Habib’の何れにも類似するとはいえないとし、差し止め請求の仮処分を認めなかった。第二審では、結合商標の構成要素を検討する上で、一体不可分の制約条件を必ずしも採用しなければならないものではなく、一連の商標の一部が侵害となるような場合には、類似としても一体不可分の原則を破るものにはならない、という「South India Beverages Pvt. Ltd. vs General Mills」の裁判例を引用して、 ‘India Slaam’を構成する‘India’と’Slaam’はどちらも原告商標の要部であるとし、被告商標は原告商標を侵害すると判じた。