ベトナムでは商標の先願主義を採用しており、出願時や更新時に使用証拠や使用宣誓書の提出は求められない。ただ登録を維持するためには商標を使用し、不使用取消のリスクを回避する必要がある。知財法は権利者または権利者から使用許諾を受けた者が正当な理由なく商標を連続する5年間使用せず、不使用取消し請求を受けた場合、また請求前3か月以内に駆け込みで使用を開始した場合、その登録商標は取消のリスクを負うことになる。通常、ケンカを売られたとき以外、権利者は使用証拠を提出する必要はない。
使用を構成する行為
ベトナム知的財産法第124条の5では、標章の使用について次のように定義している。
(a) 商品,商品包装,又は営業の手段若しくは事業活動におけるサービス及び通信書類の提供の手段に保護された標章を付すこと
(b) 保護された標章を付している商品を流通させ,又は提供し,広告し,販売用に保管すること
(c) 保護された標章を付している商品又はサービスを輸入すること
輸出するために商標を付した商品を生産することが商標の使用にあたるかどうかは定かではない。だがIP執行当局によっては、商標権侵害が疑われるときにベトナムで生産され商標を付した商品が、ベトナムにおける標章の非公式の〝使用”にあたると判断するものもある。もしベトナム国家知的財産庁(NOIP)が同様の解釈を採用すれば、輸出を目的とする生産で付した商標が使用証拠となる。
商標の同一性
ベトナム知的財産法第124条では、保護された標章の使用について商標登録時に示されたものと同一であることを定めている。しかしながら、NOIPはパリ条約第5条の「登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合にはその商標の登録の効力は失われず、またその商標に対して与えられる保護は縮減されない」、に近い立場を採っている(ベトナムはパリ条約加盟国)。この問題に関して明確な法規定はないが、文字標章が標準フォントで商標登録される場合は、スタイライズされた文字の使用は商標登録を維持する目的の標準文字標章の使用と考える、とNOIPは示唆している。ところが逆のケースは通用しない。つまり標準文字での使用はスタイライズされた文字標章の使用証拠にはならないことが結構ある。
また、色に関してNOIPはカラーで表記された文字の使用において、その要素が要部であり、色のコントラストが維持され、ほかの要素には変更がなければ、白黒で登録された商標の使用として認められる。なお逆のケースについてはNOIPで議論されていない。
本分は こちら (Use requirements for trade marks: a low threshould?)