最近結審したVictoria Plum Limited v Victorian Plumbing Ltd の争いはキーワード広告における商標の使用について考えさせられるものであるが、この問題はさらに明確になったのであろうか?
キーワード広告に他人の商標を使用することは、ブランドオーナーやその代理人にとっては厄介な問題である。最近の判例はGoogleアドワーズ内のキーワードが商標権の侵害を構成するかどうか、IPオーナーの判断の参考になるかもしれない。Victoria Plum Limited v Victorian Plumbing Ltdの争いにおいて問題となったのはキーワードに関する善意の競合使用についてだった。両社は共に浴室の小売り業者でオンラインとオフラインで商品を販売しているが、2001年より類似する企業名で併存してきた。Victorian Plumbing Ltd が広告戦略としてクリック課金型広告用に ‘Victoria Plum’ (以前の名称はVictoria Plumb) の商標を使用したあたりから企業名の併存問題が怪しくなってきた。Victoria Plum(b) は2つのケースで商標権侵害を訴えた。1つ目は当該商標がVictoria Plumbingに代わるものとして広告リンクに使用されたケースで、2つ目はVictoria Plumbing にリンクするための広告に当該商標が使用され、結果としてGoogleのキーワード挿入機能(自動的に検索タームを広告テキストに挿入するサービス)によって当該商標がキーワードとして追加されたケースである。Victorian Plumbing Ltdは2つ目のケースで商標権侵害を認めたが、善意の競合使用に基づくものと弁論した。
裁判所は欧州司法裁判所(CJEU)によって提示されたフランスGoogleが商標権侵害の基準を採用した。つまり、一般的なインターネット利用者はVictoria Plumが最初に作成した広告や経済的に付随する業務による公告で参照される商品・役務であると不正と信じ込まされることになるため、その広告が商品・役務の出所を表す商標として機能するとした。善意の競合使用であるとする反論については、裁判所は善意の競合使用により第三者が当該企業名やブランド名の使用を認められることはあっても、営利目的にそれら名称や商標を使用する権利を与えられるわけではないとし、顧客の混乱に乗じるという被告の期待があったわけであるから、今回の使用は「善意」とはいえないと判じた。
また、被告によるパッシングオフの逆提訴に関しては、原告の ’Victorian Plumbing’利用は、‘Victoria Plum(b)’ を含む広告表示をもたらし、インターネット利用者に誤認又は混同を与え、被告のグッドウィルを毀損するとし、パッシングオフを構成すると裁判所は判断した。
以前争われたInterflora v M&S の事件は名称が類似するものではないが、キーワード広告が商標的見地から本質的な不正にはならないとした。双方とも状況に違いはあるが、侵害するかもしれない行為を始める前に相手方の商標の出所表示機能に影響を与えるかどうかよく検討する必要がある。
本文は こちら (Putting Google Adwords back on the trademark agenda?)