商標は、毎日のようには生まれ、毎日のように消費者から忘れ去られ、毎日のように侵害されている。クラシックな商標問題を振り返ってみよう。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズが会社名を考えたとき、彼はアップル・コア(Apple Corps)から注目されることを予見していたに違いない。アップル・コアは1960年代にイギリスのロックバンド、ザ・ビートルズによって設立された持ち株会社である。
1978年アップル・コンピュータの創業後2年が経過したとき、ザ・ビートルズのレコードレーベル「アップル・レコード」の所有者であるアップル・コアはアップル・コンピュータを商標権侵害で提訴した。1981年アップル・コンピュータが音楽業界には参入しないということで両社の和解が成立した。しかしながらその合意は長く続かなかった。iPod と iTunesをみれば分かる。2003年アップル・コンピュータがiTunes を発表したとき、再び紛争が起き、2007年にアップル・インク(アップル・コンピュータから社名を変更)がアップル・コアのグラニースミス・ロゴを含むいくつかの商標をライセンス・バックするまで続いた。そして数年にわたる交渉の後2010年ザ・ビートルズの音楽がiTunes に載るようになった。まったく「長い曲がりくねった道(long and winding road)」であった。