ヘナ(Henna)はインド亜大陸で結婚式や特別のイベントで女性の装飾に使用されている。マーケットで簡単に手に入るが、黒いシェードができ、長く残る良い品質のヘナはあまりない。そのため消費者は信頼できるブランドのヘナを選ぶ。そこに商標の重要な役割がある。ボンベイ高等裁判所に結審したShri Rajeshwar Prasad と Prem Mehandi Centreとで争われた商標‘Kaveri’ と ‘Kaberi’ はどちらも市販されているヘナコーンに使用されているものであった。
原告 Prem Mehandi Centre は2000年以来ヘナコーンを販売するため‘Kaveri’ 標章を使用し、2007年に商標登録したと主張した。そして被告であるShri Rajeshwar Prasad が‘Kaberi’ 標章でヘナコーンを販売していることを知り、被告の商品差止めを求めて、商標法第 103 条、第 104 条(虚偽商標)、著作権法第64条、第65条で被告に対してFIR (First Information Report:第 1 回情報報告書)を提出した。また2014年に原告は原告商標‘Kaveri’ の商標権侵害と原告の使用しているアートワークの著作権を侵害するとして被告に警告書を送付したが、これに対し被告はあからさまな否認をした。原告はナーシク地方民事裁判所(District and Sessions Court)に提訴し、勝訴したが、被告はボンベイ高等裁判所に控訴した。被告の主張は、原告が被告のアートワークの著作権を侵害したというもので、それに原告は地方裁判所の裁判官に商標の登録証を提出しなかったため裁判官が両社の商標を比較できなかったとした。また‘Kaveri’ という言葉は一般用語であり原告に独占させることはできないと異議を唱えた。
裁判所は両社の答弁を聞いたうえで次のように裁定した。原告が商標の登録証を提出しておらず、地方裁判所の裁判官が単に製品パッケージの標章を比較して商標の類似を確定したのであれば実体のない判断であるが、裁判所の見解としては、両社が販売している製品パッケージは実によく似ており、パッケージの大きさやカラー構成もよく似ている。類似しないのは両製品名(原告:‘Kaveri’ 、被告: ‘Kaberi’)くらいのものだが、それも称呼は類似しているので違いは取るに足らない。商標の登録証が反証を示すものでなければ、原告はヘナコーンに関する分野で ‘Kaveri’ 商標の独占的権利を持つ。また原告が現在使用している商標が登録されたものと異なっているとしても、登録された商標によって被告の行為が法律に抵触することを証明するには十分であると判じた。
この事件から学べるのは、1.商標登録官が商標の独占権に何か制約を与えたとしても、商標は登録人の排他的権利と考えられる。2.登録に関わりなく、商標法第34条(既得権についての例外)として先使用が証明できれば権利者がより強力な主張ができる。
本文は こちら(Henna Ties)