2016-12-27

EU: KitKat(キットカット)商標、EUで再びトラブル- by Novagraaf

先週、EUの一般裁判所(General Court)でネスレのKitKatの4本のチョコレートバーが連なった4フィンガー型の形状に関する判決が出された。一般裁判所は当該商標がEU域内で識別力を獲得しているかどうかの再度審査をEUIPOに命じた。

1年以上前になるが、欧州司法裁判所は英国で登録されたKitKatの形状商標が無効であるとの結論を導いたが、先週はEUの一般裁判所がネスレの4フィンガー型の形状に関するEUの商標登録に対してセンセーショナルな一撃を加えた。

商標登録の困難さ:欧州商標法では商品の製作上技術的必然性に基づく特徴や商品そのものが持つ機能的な特徴に独占権を与えることはできない。つまり形状や色彩や音のような特徴を商標登録から排除するため、3つの拒絶事由を設けている。1.商品そのものの持つ特徴から生まれる形状や機能で構成されるもの、2.形状や機能がその商品にとって重要な価値となる場合、または、3.その商品の形状が技術的必然性に基づくものの場合。これら事由により排除されない形状だけが商標として保護されうるが、原則として識別力の基準を満たす必要がある。つまり商標としてその商品の出所を表示する機能を持つものでなければならない。

経緯:ネスレは2002年にスイーツ、パン類、ペストリー、ビスケット、ケーキ、ワッフルを指定商品としてKitKatの4フィンガー型の形状を商標出願した。それに対し、キャドバリー(現在は食品大手モンデリーズ・インターナショナルの一部)は2007年にKitKatの形状商標の無効を訴えたが、EUIPOは2012年にその訴えを棄却した。当時のEUIPOはEU域内において当該商標が使用により識別力を獲得したと認め、EUIPO審判部は次のように結論付けた。1.EUの10加盟国で行った調査ではKitKatの形状商標はEU域内で充分識別力を獲得している、2.獲得した識別力は指定されたすべての商品において立証された。

結論:EU一般裁判所は、獲得した識別力がEUの全加盟国において証明されていないとして、現在の法規定上EUIPO審判部に同意しないとした。欧州司法裁判所の判例に基づけば、商標出願人は当該標章が本質的識別力を持たない場合、EU加盟国では当該標章を使用することで識別力を獲得したことを立証しなければならないとしている。つまりKitKatの4フィンガー型の形状の立体標章はEU全域での識別力が必要となる。ネスレが商標出願した当時、EU加盟国は15ヵ国であった。それゆえEUIPO審判部は残りの加盟国における証拠を審査しなければならなかった。加えて、EUIPO審判部は指定されたすべての商品・役務において識別力を証明したという誤った法解釈を採ったとEU一般裁判所は指摘した。それはEUIPOが指定された商品はすべて菓子類のサブカテゴリ―に属していると述べていることからも分かる。権利化する商品すべてで識別力を獲得していることを立証するためには、当該標章が商標権者に指定されたそれぞれの商品と役務のカテゴリーで使用されなければならない。EUIPO審判部は提出された証拠がスウィーツとビスケットに関してのみ標章の使用を立証したに過ぎないという事実を見逃した。これらを考慮し、EU一般裁判所はEUIPO審判部の決定を破棄し、KitKatの4フィンガー型の形状が識別力の基準を満たしているか改めて審査するよう命じた(注:当該商標の無効が判示されたわけではなく、判断をEUIPOに差し戻した)。

本文は こちら (KitKat’s EU shape mark in trouble (again))