ベトナムにおける激しい競争の中で、企業は単にビジネス問題に焦点を当てるだけでなく、商標権保護にも配慮する必要がある。 ベトナム経済の開放により企業は正当な権利と利益を保護するために多くの課題に取り組んできた。
「アキュラ」はホンダの高級車ブランドで、1986年に米国とカナダで初めて発売され、長年にわたり、高級で高性能な製品として自動車産業界でその人気を高めている。Agelessは、ベトナム公報を通じてベトナム人のMs. Tang Thuong Thao(以降、出願人)が、1類(工業用、科学用又は農業用の化学品他)、4類(工業用油、工業用油脂、燃料、光剤他)、7類(加工機械、陸上の乗物用のものを除く原動機、その他の機械他)、12類(乗物その他移動用の装置他)を指定して「ACURA」商標を出願したことを確認した。あいにくホンダはまだ「ACURA」をベトナムで商標登録していなかった。
ベトナムの現行法では、以下の場合に商標出願に対抗することは可能である。
- 登録商標または係属中の商標出願、または、
- 広く使用され認識されている標章、または、
- ベトナムで未登録の著名標章
しかし、現実にはベトナム国内における強力な証拠を示さない限り、NOIP(National Office of Intellectual Property of Vietnam:ベトナム国家知的財産権庁)に「広く使用され認識されている標章」または「著名標章」として記録されることはかなり困難である。
本件の場合、「ACURA」商標を付す自動車は、主にベトナムではなく北米および中国市場向けに開発されており、ベトナムで「ACURA」商標の使用に関する公式の文書や資料は存在しない。これは、ホンダの正当な権利と利益を保護する上で大きな課題となった。
本件に関する調査後、Agelessは顧客企業に、ベトナムでの「ACURA」商標の使用に関するすべての文書と資料の収集を求めた。そこで得られた情報とインターネットから収集された追加情報で、日本と米国を除いて「ACURA」商標は世界100カ国以上で保護されていると結論づけることができた。販売件数、売上、広告費用は非常に巨大で印象的なものだった。別の側面として、「HONDA(ホンダ)」商標がハウスマークとしてベトナムの顧客にもよく知られており、ベトナムでも既に著名な商標として認識されていた事実もある。
ホンダは、ベトナムで「ACURA」商標を広く使用し、出願人の商標出願前に、既に著名と認識されていたとして、ホンダは異議申立てを行った。出願人は、「ACURA」はベトナムで著名と認識できるレベルではなく、「ACURA」は出願人自身が考え出したものだと反論した。
出願人の主張はかなり主観的なもので、「ACURA」は英語としてもベトナム語としても意味のある単語ではなく造語である。それまで何も見たことがない人が単純に思いつくことはまずありえない。したがって、出願人はホンダの商標を乗っ取り、不正に「ACURA」商標を登録しようとした詐欺行為であると結論付けられる。
別の展開では、後で分かるのだが、出願人が出願商標を分割して指定区分を7類、12類と1類、4類の2つに分割申請を行った。このことは、出願人が7類と12類の登録の困難さを予め認識していた可能性を示している。自動車に関する7類と12類は諦め、1類と4類)の商標登録を試みたとみられる。
Agelessは、同じ素材や部品など、それらの機能を実行する上で普通に使用されるなど関連する特質を持つ点で、1類、4類の商品も7類、12類の商品と非常に類似しており、共通する販売店など流通チャネルも密接に関連している、として1類、4類の商標に対しても異議申立てを行った。
NOIPは資料と審議内容を慎重に検討した後、異議が適切で合理的であることを確認する2つの通知を出した。つまり、NOIPは出願人名義の2商標の保護を拒否したのだ。また、関係書類により、「ACURA」商標はベトナムでも著名商標として登録され、商標登録証明書はまもなく付与される予定となった。
ベトナムにおける商標保護の実態から、企業がベトナムのIP法に関する知識を十分持っていないのではないかと感じることがある。ベトナムで正当に得られるべき商標権を得られないという不幸な結果につながらないようにしたい。
本文は こちら (Successful trademark protection in Vietnam for ACURA)