2017-02-17

タイ:商標の識別力に関する最高裁判決 - Tilleke & Gibbns

識別力の欠如は、タイの商標登録官および商標委員会によって最も一般的な拒絶理由の1つである。多くのブランド・オーナーが商標の識別力に関する厳格な審査を受けている。この査定を覆すためにはIP&IT(Intellectual Property and International Trade Court:中央知的財産・国際取引裁判所)に控訴する必要がある。最近タイの最高裁判所は、ブランド・オーナーが登録することができる記述的な商標について興味深い判断を下した。

今回のケースの出願人は、ベルト、ビーチ靴、ビーチ衣類、帽子、野球帽、カジュアル衣類、フード付きスエットシャツ、ジーンズ、プリントTシャツ、ジャケットなどを指定して国際分類25類(被服、服飾小物、履物他)に商標「Superdry」を出願した。登録官は本件商標「Superdry」は商品の特性を記述したものだとして、識別力がないことを理由に商標登録を拒絶した。

この裁定に対して本件出願人は商標委員会に不服申立てを行った。しかし、「Superdry」に小さく併記されている日本語が「非常に乾いている」または「非常に乾燥している」ということを意味していることで、本件商標を付した商品の使用者が乾いて快適な感じを持つ速乾性の質感により、「Superdry」の衣服の品質が他の商標を付した衣服よりも優れていることを消費者に明示している、とする登録官の根拠を商標委員会は支持した。 

この商標委員会の裁定に対して、本件出願人は本件商標が指定する商品の特性を説明するものではなく登録されるべきものだと主張しIP&ITに控訴した。IP&ITは、「Superdry」という言葉の意味において、商標委員会が「Superdry」という言葉は「非常に乾燥している」と解釈すると認定したが、識別性に関して、IP&ITはこれらの意味が本件商標を付した商品の種類についての一般的な理解または認識に影響を及ぼすものではないとの判断を示し、本件商標の識別力を認めた。

厳密には、Tilleke&GibbinsはIP&ITの判決が正しいものとは考えない。なぜならば、このケースで争っているのは、「Superdry」という文字が商品の性質または特徴を記述したものかどうかであり、商品の種類に対するものではないからだ。

本件は最終的に最高裁判所に上訴された。判決は、「ある文字が商品の性質や特徴を直接的に記述しているかどうかを判断するためには、その言葉が商品の性質または特徴と一般公衆に直ちに理解されるかどうかを検討する必要がある。もしその言葉が商品の性質や特徴と密接に関連している一般的な用語である場合、または一般公衆が商標を付した商品の性質または特徴を知るために限られた判断しかできない場合は、その言葉が商品の性質や特徴を記述的に表したものとみなされるであろう」というものであり、最高裁は、「商標により消費者がその商標を付した商品の性質または特徴を理解するために大きな考察力や想像力を働かせねばならない場合、その言葉は商品の性質や特徴を直接的に説明するものとはみなされない」と判じた。

本件で、「Superdry」という単語が標準的な英語の辞書に意味を持たないとしても、「Superdry」という単語が「super」と「dry」の組み合わせであること、一緒にすると、「非常に乾燥している」と解釈することができることについて、本件出願人が否定しなかったと最高裁は判断した。もし本件商標が「dryness:乾燥」を特別な特徴とする商品に付して使用された場合、その言葉は商品の特性を説明するものであるといえる。いずれにせよ、最高裁は本件商標に指定された商品は、ベルト、靴、帽子、シャツ、ズボン、カジュアル衣類、スカーフ、手袋および下着等の衣料の区分において、乾燥機能が消費者の必要とする特別な特徴とはいえず、故に「Superdry」という文字は商品の性質または特徴を直接指すものではないと判じた。

さらに、最高裁は商標「Superdry」が「スーパー」と「ドライ」という言葉から構成されており、商標権委員会が判じたように、本件商標を付した商品は速乾性であることを一般公衆が理解することは非常に困難だとの見解を示し、さらに例え「Superdry」という言葉が「速乾性」を意味すると解釈されても、商品の性質または特徴を指すものではなく、「Superdry」商標は登録に必要な識別力を持つとした。

最高裁判所の判決は、国際慣行における商標の識別力の解釈と整合している。ある文字に識別力がないとみなされるためには、その言葉によって、出願商標の指定する商品の性質または特徴を一般公衆が直ちに理解できる、または考察力や想像力を少し働かせれば理解することができる場合であることを最高裁は強調した。一般の人々にとっては、文字と指定する商品・役務との関係を理解するために、少なくとも合理的な考察力または想像力を働かせる必要がある場合、そのような文字が記述的であると直ちに解釈できない。

この最高裁判決は、タイに商標を登録する際に同様の問題に直面する可能性のあるブランド・オーナーのための良い指針となるだろう。さらに、商標登録官および商標委員会が最高裁判所の判例に厳密に従っているとすれば、それによりタイにおける商標登録実務は国際商標実務と同一かつ一貫性もあるように標準化されるだろう。

本文は こちら (Case Study: The Supreme Court’s Interpretation on Descriptive Trademarks)