モノポリー(Monopoly) は、ハズボロ(Hasbro)の世界的に有名なボードゲームだが、世界には様々なバージョンのモノポリーが存在する。ハズボロは近年ゲームと商標を積極的に守っている。
クロアチアのある企業が欧州連合(EU)に「Drinkopoly」を商標出願した。接頭語が異なるため、混同の虞による異議申立ては難しいとみられていた。しかしハスブロは接尾語 “opoly”によって商標の希釈化し、商標の保護が難しくなると考えアクションを起こした。
商標の名声について主張することは、この種のケースではよくあることで、ハスブロは、商標の評判が毀損し希釈化するとして異議を申立て、異議が認められた。EUIPOは「Monopoly」の名声を認識したうえで、一般的消費者が両商標を関連付ける可能性が高いとし、「Drinkopoly」が「Monopoly」の評判に不利益を与えるとしている。
興味深いのは、ハスブロが品質の劣った製品のために商標に不利益を与えられたと主張したことである。EUIPOはこの主張は非常に主観的であるとしてこの主張を認めなかった。EUIPO異議部は、異議を申立てられた商標の使用により先願商標の評判を損なう可能性があるかどうかを評価する際、各商標の指定商品・役務に記載されている商品のみ検討することになる。一般的には、異議を申立てられた標章の使用による不利益は、関連する商品が普通に持つ性質や特性から派生したものでなければならない。
最終的にEUIPOは、EU商標理事会規則第8条(5)に基づき、名声を得た商標の所有者は、同等の性質を有する明らかに品質が劣っている商品および役務に付した類似する商標の使用から保護されると述べている。このことは、先願商標によって享受された名声と評判は、後願商標で指定された低品質の商品および役務が先願商標と関連付けられることを意味し、出所を混同する虞を生じさせる。出所の混同がなければ、いくら後願商標の商品やサービスの品質が劣っていても、先願商標が享受する高い評価を損なう可能性は低い。しかしこのような混同が生じれば、後願商標の使用は必然的に先願商標の名声を利用することを意味する。評判が悪い商標の所有者がそのような評判を利用し利益を得ることは必然的に不公平となる。ただしEU商標理事会規則第8条(5)が適用されるのは、品質の劣る商品・役務が先願商標の評判に悪影響をもたらすからではなく、先願商標の識別力や名声を不正に得るからである。