英国以外のEUの国とビジネスを行っている英国企業や英国のみでビジネスを行っている企業もだが、英国以外の欧州の国々に顧客やサプライヤーのいる企業は、Brexitの影響について注意を払わなければならない。これには、商取引契約で想定されている権利と義務への影響が含まれる。さらに、新しく契約を締結するときにBrexitを考慮する必要があるだけでなく、既存の契約もまた見直しと修正を必要とする可能性がある。
EUやEEA(European Economic Area、欧州経済領域)の加盟国を参照して、定義された地域で権利を付与するライセンス契約や流通契約などの契約では、定義する地域を「欧州」とすることが頻繁にみられる。ある時点で、定義された「欧州」には英国が含まれなくなる。
- EU域内で権利を付与する既存契約については、英国がBrexit後の契約領域の一部として引き続き含まれるかどうかを決める必要がある。
- 新たに締結する契約は、定義された「EU」に英国を初めに含めるか除外するかを決めるがよかろう。英国を含むのであれば、英国がEUを離脱するときに、契約の定義領域に残すかどうかも決めた方がよい。
利便性のために、Brexit後も英国は依然として重要な領域であるため、多くの契約当事者は英国と残りの大陸の国々との関係に何が起こったとしても、契約上の「欧州」の定義に英国を維持したいと考えるだろう。しかし、英国以外の加盟国がEUを離脱する場合には、この緊急時対応計画を英国に制限せず、離脱する国に起こることを契約に盛り込むことが賢明である。
Brexitによる変化;
- 人の移動の制限、重要な人材を確保することが困難になる可能性。
- EUの法規制から(徐々にかつ段階的に)分岐する英国には、「1つのサイズですべてに適合する(one size fits all)」製品とサービスはある意味不可能であり、付加価値税、データ保護法、競争法などは英国独自のものになっていくであろう。
- 英国・EU間の貿易障壁が高くなる可能性。
- この状況が続くことによる英国ポンドの価値の不安定さ。
- 並行輸入等による競争原理の変化。
上記は、開発、納期、価格、ロイヤルティの算出、最小購買目標および製造物責任に関する事項の契約条項に対する適合性と達成可能性に重大な影響を及ぼす可能性がある。したがって、既存の契約については、当事者は以下の事項を確認する必要がある。
- 任意の条項を再交渉する必要があるか?
- 相手側が再交渉に応じない場合、または自社が変更に同意できない場合は、通知により契約を終了できるようにすべきか?
- 不可抗力や破棄条項を根拠に契約を解除する余地はあるか?
- EU域外の事業や市場に焦点を変更することで、混乱を緩和する(またはその逆)のにどの程度の余地があるか?契約で可能になっているか?
新規の契約を締結する時には、これらの問題のすべてを考慮する必要がある。Brexitの最終的な結末は不明確なので、理想的には最大限の柔軟性を組み込んで計画することで、どのような変化にも対応できるようにしておきたい。
現在、異なる国にある当事者間の契約で、法律および管轄権の適用について記載がない場合、Brexit後には英国で適用されないEUの条約および規制によって対処されるため、支配下となる法律および管轄権を適用する規定条項を含めることがとても重要である。
英国のEU離脱が起こったら;
- 英国の訴訟担当者がEUの勝訴判決を英国で執行するのは難しいかもしれない。
- 英国の訴訟担当者がEU加盟国の裁判所で訴訟を起こした場合、外国人として以前よりも不利な扱いを受ける可能性がある。特にBrexit交渉が辛辣で問題のある終わり方をした場合は特にそうなる可能性がある。その結果、慎重に相手方を選び、契約上の関係を管理し、実行可能な義務にのみサインすることがとても重要だ。
Brexit列車の最終的な目的地が不明なので、上記の事態のすべてを計画するのは難しいかもしれない。プラス面は、電車はゆっくりと動いていることだが、英国・EU間の関係がリセットされ、それが商取引とイノベーションにどのように影響するかは、時間の経過と共に進化していくであろうし、それが新しい環境に準備をしている人々に、来るべきチャレンジとチャンスを最大限に活用する機会を与えるであろう。
本文は こちら (What will Brexit mean for your commercial contracts?)