2017-04-11

インド:非営利団体の損害賠償請求は認められない? - R.K.DEWAN & Co.

マドラス高等裁判所は、最近Ramaniyam Real Estates Pvt(被告)による「Aurovallie(オーロヴィル)」標章の不正使用に関する事件を取扱った。被告の標章が原告の組織名称オーロヴィル財団(Auroville Foundation)と混同するほど類似する疑いがあるというものだ。オーロヴィル財団は、裁判所に対して被告が「Ramaniyam Aurovallie」標章を建設工事プロジェクトに使用したため、当該標章が「Aurovallie」と混同するほど類似しており、名称の不正使用に当たるとして、裁判所に提訴した。マドラス高等裁判所は、被告に対して標章の恒久的使用差止めを命じたが、原告の損害賠償請求は認めなかった。

オーロヴィル財団はポンディシェリ郊外にある国際的かつ文化的な団体で1991年に設立され、オーロヴィルの開発と管理を行っている。裁判所は、「Aurovallie」という名称が「1950年の標章と名称(不適切な使用の防止)法」により保護されており、1968年にオーロヴィルが創設されて以来、その名称が原告により継続的に使用されているという原告の主張を認めた。
これに対して、被告企業は1986年に設立され、不動産および建設業界で高い評判を得ていると主張し、さらに、被告が採用した標章「Ramaniyam Aurovallie」は、インドのタミル・ナードゥ州ヴィリュップラム地区の地名との混同を避けるために、その名称と紋章と結合したとも主張した。加えて、原告は商標法に基づく「Aurovallie」の登録を受けていないとし、原告が商業目的で商品、役務の生産活動に関与していないためパッシングオフ(詐称通用)にも当たらないと、被告は裁判所に申立てた。 

裁判所は、両当事者の主張を聞いたのち、原告の標章「Aurovallie」は本質的に識別力を持ち、原告により継続的に使用されていたことを認め、「Aurovallie」は1950年の徽章と名称(不適切な使用の防止)法と1988年のオーロヴィル財団法によって保護されているとし、被告がヴィリュップラム地区の地名との混同を避けるために、「Aurovallie」の名称と紋章と結合したという主張も、そのような地域が存在しないことから、裁判所は否定した。また、被告による「Aurovallie」の使用が原告の標章と名称に混同するほど類似するとして、裁判所は被告に対して「Aurovallie」標章の恒久的使用差止めを命じた。しかしながら、原告の損害賠償請求は却下した。名称の商業目的の使用かどうかの議論には、パッシングオフ(詐称通用)や侵害行為が、原告有利となることが多いが、それらが必須というわけではない。今回の原告も、いかなる商業活動にも関与していないため、金銭的損失を賠償請求できないという制約が両刃の剣として働くことになった。裁判所は、1986年以来被告が取引を行っており、その間に名声を獲得したことを認めたが、その上で、原告の主張のように被告が欺瞞的な標章「Aurovallie」を使用して建造したアパートを売却したとしても、被告に何のメリットも齎すことはないと判じた。

結論として、標章の商業的使用がパッシングオフを認める唯一の基準ではないという裁判所の判断が正しいとしても、損害賠償という救済を与えないという行為は正当化できないかもしれない。マドラス高等裁判所は、原告の標章に混同するほど類似する「Aurovallie」標章の採用により、被告が関与した不当利得については認めなかった。裁判所は金銭的に定量化することができない評判やグッドウィルについて、非営利団体の損害も考慮しなければないないはずだが…

本文は こちら (Non-Commercial Use Bars Damages)