商標を登録することにより、その商標の所有者は登録商標と同一または類似する商標を使用している第三者に対して法的権利を行使することができる。しかし、登録商標は商標を構成する個々の要素に対する保護を主張する権利までを所有者に与えるのであろうか?この問題は、Crocodile International PTE Ltd(クロコダイル・インターナショナル)とLacoste(ラコステ)との間の商標訴訟として、ニュージーランド最高裁判所(the Supreme Court)に持ち込まれた。
ニュージーランド商標法第66条(1)(a)の商標の取消理由として、「商標がそのときの所有者により,その登録に係る商品又はサービスについて,ニュージーランドにおける業としての真正の使用が,連続して 3 年以上の期間全くされていないこと」と規定している。クロコダイル・インターナショナルは、ラコステの商標(登録番号70068)の取消請求を行った。ラコステは、ニュージーランドの商標法第7条(商標についての使用の意味)の「登録された形態での商標の識別性を変更しない要素において異なる形態による使用」である場合には、商標の使用とあたると主張した。ラコステの使用形態は以下の通りであった。
故に、ラコステは当該商標の使用が、商標法第7条に記載されている通りの使用であると主張したが、商標局のアシスタント・コミッショナーはラコステの主張を認めず、商標の登録形態と使用形態が異なるとして、登録商標の使用とは認めなかった。この裁定は高等法院(the High Court)に上訴され、コリンズ判事(Collins J)によって覆された。コリンズ判事は、商標の「ワニ」の向きが異なるとか、「ワニ」という文字の有無とか、商標の登録形態と使用形態に差異があることを指摘した上で、これらの相違は重要ではなく、要部はすべての商標が類似するワニの描写で、平均的な消費者も、商標における視覚的および観念的なメッセージは類似していると考えるであろうと結論付けた。控訴裁判所(The Court of Appeal)も、コリンズ判事の判決を支持したが、最終的な結論は、最高裁判所に持ち込まれた。
最高裁判所は、商標の中心的なメッセージが、商標を識別するための外観、称呼および観念的な要素になりえるが、商標の使用を判断するために、中心的なメッセージに拘ると、商標が伝える様々なメッセージの可能性を無視することになるため、商標の所有者に対して、必要以上に過度の保護を与える結果となる可能性があるとした。その上で、ラコステの登録商標と使用形態に全体的な表現に違いがあり、登録商標はどこにも使用されていなかったとして、商標の登録取消を判示した。
このニュージーランド最高裁判所の判決は十分に合理的であり、商標の要部の使用だけでなく登録された商標の使用を考慮して、商標取消請求事案を判断できることを示唆している。
本文は こちら (Inventorship rights of an Invention by Artificial Intelligence)