2017-04-28

中国:商標法における「先行権」としての「商品化権」 - Marks & Clerk

北京高等人民法院がドリームワークスの人気アニメーション「カンフー・パンダ」の商品化権(merchandising rights)を認めた画期的な「カンフー・パンダ」事件で、中国最高人民法院(SPC)は、新しい司法解釈においても比較的高いレベルの認知度と評判を誇る著作物のタイトルやキャラクターの名前が、商標法上の「先行する利益(earlier interest)」として保護されることを確認した。

2017年3月1日に効力を生じた「商標権の付与と権利の確認を含む行政訴訟に関する最高人民法院の規定」(SPC規定)は、「著作物を含む作品に関して、作品のタイトルやキャラクターの名前が高い評判を得たのち、それらを関連する商品に付した商標として使用することにより、その著作権者を連想させ、著作権者から許可を得ていると信じてしまう(関連する)公衆を欺むく可能性が高いため、関係当事者がこれに基づいて先行する権利を主張した場合、裁判所はその請求を支持するものとする」と定めた。

SPC規定は、「商品化権」という言葉について明示的に触れてはいないが、評判の高い著作物のタイトルやキャラクターの名前から生じる公衆の利益を含むように商標法における「先行する権利」の概念を拡大することによって、商品化権も暗に認めている。

この出来事は、中国には慣習法がないため「カンフー・パンダ」判決が将来の事例に影響を及ばないことに懸念を示していた権利者を勇気づけた。ただし、権利者は商品化権の保護が限定されていることに注意する必要がある。これらの権利は商標の異議申立てや無効審判請求などの行政訴訟においてのみ権利行使が可能となるかもしれない。著作権者が、商標登録をすることなしに著作物のタイトルやキャラクターの名前を使用することを積極的に止めることはできないが、これらの権利は、小説や映画のような著作物のタイトルやキャラクターの名前に適用されるのみで、侵害者に狙われやすい現存する有名人や架空の有名人の名前、イメージ、その他の識別可能な特徴にまでは及んでいない。

しかしながら、SPC規定には有名人の名前の保護に前向きなところもみられる。SPC規定は、問題の商標が自然人(有名人)を指し、その商標が付された商品が当該人物によって許可されている、または関係していると、関連する公衆が信じるような場合、裁判所はその商標がその人物の名前の権利を侵害すると判断する可能性はある。このような特定の名前が評判を得て、その自然人との関連が確立された場合、保護はペンネーム、芸名、名前の翻訳にまで及ぶことになる。このことは最近のSPC判決にも反映された。元NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)は、中国のスポーツウェア・メーカーが先行して登録した中国語文字商標「乔丹」(QIAODAN:JORDANの翻字)についての所有権キャンペーンを長らく続けていた。SPCは中国においてジョーダンの中国語翻字は元NBA選手と密接に関連していると認め、第三者によって登録された「乔丹」商標は、ジョーダンという名前が西洋では平凡な名前だとしても、マイケル・ジョーダンの名前の個人的な権利を損なうものであろうと判じた。SPC規定は、現存する有名人や架空の有名人のイメージや識別可能な特徴というさらなる保護にまでは踏み込んでいない。

SPC規定は、標章の著名性、混同の可能性、悪意の推定状況を評価する方法などを含む取決めにも触れている。商標事件の審査には基本的なガイダンスがある。この中には登録可能性と(商標全体を観察することによる)識別力の評価を含んでいる。そして、権利者の意志に反する第三者による商標の使用が権利者による使用とみなされないと定めている。権利者が商標を使用する意思があり、使用するための必要な準備を行ったが、客観的な状況によってその使用を妨げられている状況では、商標の不使用は正当化される。

SPC規定は、これまでの法的根拠を打ち破ってはいないものの、最近様々に高く注目された事件で言い渡された判決の根拠を強固にして、歓迎すべき方向へ審査基準を改善するための実践的措置を導入しようとしている。

本文は こちら (China confirms “Merchandising Rights” as “Earlier Rights” under Trade Mark Law)