英国首相、テリーザ・メイによるリスボン条約第50条の発動について、多くの記事が出ているが、今のところ知的財産権を取り巻く状況は安定している。Brexit(英国のEU離脱)についての本格的な交渉がまもなく始まるだろうが不確実な要素が多い。英国がEUを去る最も早いタイミングである2019年3月まで、知的財産に関する主要分野での変化はまったく想定されていない。英国が実際にEUを離脱するまでは、EUの商標登録(EUTM)は、英国で引き続き効力を持ち権利行使もできるが、Brexitが終了したときは、既存のEUTMは英国で保護を受けることが出来なくなる可能性もある。
英国のEUからの離脱の条件が確定するまで、登録されたEUTMに対するBrexitの影響は分からないが、既存の権利が英国で引き続き有効であることを確実にするための適切な法律が施行され、Brexit前に移行手続が実施されることが期待される。ただ現時点では、それがどのような形態なのか、どのような経過処置がとられるかは不明だ。英国における継続的な保護を担保するため、登録されたEUTMの権利移行のシナリオには、英国の商標としての「再登録」や英国出願に変更されるような処置、EUTMを英国知的財産庁によって審査するようなプロセスが含まれる。
EUTMは:既存のEUTMは自動的に英国の登録簿に登録されるか、EUTMが分割され、権利者は英国へ保護を拡大するかどうかを決めるか、またはEUTMが英国の商標登録でシニオリティ(優先権)の主張をできるようにする、というようなプロセスか?
権利の消尽:「権利の消尽」の原則による制限はすべてのEU加盟国と他の欧州諸国を含む欧州経済地域(EEA)における自由貿易の促進を意図している。Brexit後、英国がEEAに残るかどうかで、これらの権利が英国に引き続き適用されるかどうかが問題となる。もちろん英国がEEAに加盟したままであれば何も変わらないが、もし英国がEEAも離脱するのであれば、権利者はEEAから英国に輸入し、再販されることに対して制限をかけることができる場合がある。そして、英国で最初に販売された商品をEEAに輸出し、再販することを防ぐのに、EU加盟国で有効な商標権が使用されるかもしれない。
検討の時期:英国がリスボン条約第50条の引き金を引いたことで、知的財産権に何か急な変更がもたらされることはなかった。今は2019年3月以降、英国がEUを去ったときに考えられる既存の知的財産権や契約、戦略がその目的を果たし続けるためにはどうすべきかを検討する時期であろう。英国がEUから離脱する際の条件が明確になるにつれて、Brexitが知的財産権にもたらす意味について引き続き最新情報を提供していきたい。
本文は こちら (Does the triggering of Article 50 impact my IP rights?)